第198話 生まれ変わったようである


 しかし今はそんな不思議な感覚などどうでも良いだろう。


 今大事なのは、目の前にいるこの不届き者へ鉄槌を下す術を我は手にする事ができたという事である。


 そして、目の前の者達へこの怒りをぶつけ鉄槌を下す術を手に入れたのならば行使しないという判断は無いだろう。


 そもそも我に対して不敬を働いたのならば死んで償うべきなのであり、私が処断されるなどという事は本来であればあってはならぬことであったのだ。


 それもこれも全てあのクソ皇帝とブランシュ聖王のせいであり、特にブランシュ聖王に関しては今まで目をかけてあげたというのに恩を仇で返しやがって……。


 その分ブランシュ聖王に関しては死にたいと自ら思ってしまうような苦痛を与え続け、数十年に渡ってこの我を裏切り処刑したという大罪をその身をもって分からせた上で殺さなければならないだろう。


 最早これは決定事項である。


「しかしながら今は目の前の不届き者が先であるな……」


 我はそう呟くと闇魔術を行使して、陰を操り三名の不届き者達を縛り身動きをできなくする。


 そして、不届き者たちは身動きが取れなくなった事に気付いたようで焦り始めているのがその叫び声で分かる。


 しかしながら今さら後悔しても遅いとしか言いようがない。


「何で急に身体が動かなくなるんだよっ!?」

「だから俺は言ったんだよっ!! コイツの墓を荒すのはっ!!」

「何でそれをもっと俺達に強く言って止めなかったんだよっ!?」

「はっ!? 俺のせいっていうのか? そもそもコイツの墓を荒そうと提案したのはオメーじゃねぇかよっ!!」


 不届き者たち三人は我が歩いて接近している事にすら気付けぬほど興奮し、誰が原因でこうなってしまったのか罵り合っているようなのだが、流石にうるさいので黙らす事にする。


 因みに、我は今自分の魔力を原動力として身体を動かす事ができる事に気付いたのだが、今まで筋肉で身体を動かしていた故に、まだ魔力で身体を動かすという事になれておらず、ぎこちない歩き方になってしまっているのは少しばかり目を瞑って貰えるとありがたい。


「やかましいぞっ。 黙らんかっ!」

「ひぃっ!?」

「な、…………何で生きて……っ!?」

「いや、違う……こ、こいつ……リッチになって蘇っているんだっ!!」


 なるほど……。


 確かに首を切り落とされて死んだはずの我が何故こうしてまた自我を保って蘇る事ができたのか納得がいった。


 どうやら今の我はリッチとして生まれ変わったようである。


 生前では討伐していた醜い魔物であるのだが、この際蘇れたのだから文句は言うまい。



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