第197話 不思議な感覚


 そう思っていたのだが、どうやらこの者たちは墓荒しであったようである。


 そのような者達を当然許せるはずも無く、我の墓を荒しに来たこのゴミクズ共も当然の如く粛清対象へと入れる事にする。


 当たり前であろう。


 好意を向けるのであればいざ知らず、我に対して敵意や不敬な行動を行ったのであればそれ相応の罰を与えられて当たり前であろう。


 しかしながら、今現在我はこの者たちに対して何ができるかと言われれば何もできないのだからもどかしい。


 せめて生前仕えていた魔術を行使できるのであれば簡単に殺す事ができたのだが、恐らくグールかリッチかスケルトンに成っているであろう。


 リッチであればまだ何らかの魔術は行使できるのかも知れないが、グールかスケルトンであればそもそも魔術を行使する為に必要な魔力を保持していない為、子供でも行使できるトーチの魔術ですら行使する事はできないだろう。


 そして、リッチである以上生前覚えた光魔術の数々は当然使える訳もなく、万が一使えたとしても恐らくその時は我が消滅する時であろう。


 そんな事を考えている合間にも墓荒らしたちはどんどん我の墓から金品に変えられるものを奪っていき、あと少しでこの場から去ってしまう。


 この手際の良さから見てもこの者たちは今回が初めてではなく墓荒らしで生計を立てている者達であると見て良いだろう。


 この我の墓を荒らして、我はその者達に何もする事ができずに逃がしてしまう。


 そんな事があってたまるものか。


「…………ん?」

「おいっ!? どうしたっ!? 回収し終えたんならば衛兵に見つかる前にさっさとズラかるぞっ!!」

「いや、すまん。 さっきこの死体が動いたように見えたんだが……どうやら気のせいだったようだっ!! 今から回収した物を持ってそっちへ行……く? あれ?」


 そう思い、我の中で怒りの感情が高まり、最高潮へ達したその時……我は今まで覚えた光魔術を脳内で反転して考える事ができた。


 何故今までこんな簡単な事に気付かなかったのであろうか。


 闇魔術とはいわば光魔術と対なる魔術属性である。


 となれば水と炎という基本的な属性の違いとは違い、光と闇は同じ魔術属性の系統であると考える事ができるではないか。


 ならば、今まで覚えてきた光魔術を行使するに必要な動作を反転させればいい。


 これで闇魔術を行使できるかも、などいう曖昧な感覚ではなく『間違いなく我はこれで闇魔術を行使できる』という確信がある、なんとも不思議な感覚である。

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