第194話 一体何を考えているのやら
◆
「良いのですか?」
「何がだ?」
鬱陶しいリリアナが見えなくなった時、ヒルデガルドが俺にそんな事を言ってくる。
地味に腹が立った俺はあえて何の事について聞いて来ているのか分からないといった体でヒルデガルドへ返す。
そもそもあのリリアナと俺のやり取りを見て『良いのですか?』と聞いて来るあたり、ヒルデガルドは今まで何を見ていたのか?と問い詰めてやりたくなる。
「いえ、先程の話からしてカイザル様の元婚約者であると思うのですが……」
「あぁ、そうだな。 アイツは
とは言ってもリリアナの言い分や態度からして『まだ正式に婚約破棄をしていないのだから婚約者の間柄である』とでも思っているのであろうが、俺からすればあの日弟へ乗り換える為のお披露目パーティーを開催した時点で婚約破棄は成立していると思っているし、そもそもリリアナの父親であるガイウスから後日しっかりと婚約破棄をする旨の了承を得ているのだ。
あのアバズレは俺との婚約関係はまだ破棄していないという事に賭けて色々と裏で動いているのか、はたまた弟から俺の方がやっぱり良いとでも思ったのかは分からないのだが、とにかくどちらにせよ頭の悪い事を考えているであろう事は容易に想像できてしまうのだから救いようが無い。
「そ、そうですか……」
そして俺の返事を聞き、納得がいっていないような、しかしながら嬉しそうな、器用な表情をヒルデガルドがする。
一体何を考えているのやら。
俺からすれば何を考えているのか分かりやすいリリアナよりも何を考えているのか分かりにくいヒルデガルドの方が要注意人物である。
その為ヒルデガルドは俺の敵ではないという事は分かっているのだが、敵ではないから安全という訳でもないので気を緩める事無く日常を過ごす。
というかガイウスは今何をやっているんだ?
一人ないし二人ほど殴り飛ばして終わりではなかったのか?
未だに音沙汰がない為にヒルデガルドの御守を続けなければならないという現状に、そろそろ苛立ってくるというものである。
いっその事直接聖王国にいるガイウスに文句を言って強引に帝国へと連れ戻してやろうかと思い始めている。
しかし、ガイウスが帝国に戻って来たところで、それはそれで面倒くさいというか、何故か俺にガイウスが構おうとしてくるので、その相手をするのが面倒臭くて堪らない。
その面に関しては楽なのだが結局のところ、ヒルデガルドかガイウスか、どちらが面倒かという違いでしかない。
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