第193話 一生をかけて今日の事を償わせてやる



 しかしながらカイザルが放った言葉は私が想像していたそれとはまったく違い言葉であり、その言葉を放ったカイザルの表情もまた、私が想像していた表情とはあまりにも違っていた。


「…………あら? カイザルの癖に私に向かってそんな事を言って良いのかしら?」


 その事実に私は受け入れる事ができず一瞬だけ固まってしまったのだが、その事をカイザルに悟られないように何とか言い返す。


 流石のカイザルもこの私からここまで言われたら流石に慌てるだろう。


 なんなら謝罪しながら私に縋ってくるかもしれない。


 そんな未来を想像しながら私は細く笑んでいるのだが、いくら待ってもカイザルが私に謝罪をする事も無ければ縋ってくる事もないではないか。


 一体何を考えているのか? この男は。 と私は少しばかり腹が立ってきたところでカイザルがようやっと口を開く。


「何言ってんだお前? そもそも俺との婚約を破棄したかったんだろう? いまさらそんな俺に話しかけてくる意味が分からんし、あれほど俺に対して最低な言動や態度で接してきておいて何でフランクに話しかけて来れるのかも分からなければ、一度痛い目を見て分からせられたいのかと思ってしまうんだが? あと、お前の父親であるガイウスにお前との婚約を正式に破棄してもらっているから既に俺とお前は元婚約者同士であり赤の他人だからな。 次、偉そうな態度で俺に突っかかって来ようものならば容赦なくぶん殴るからな? 女だから、皇帝の娘だから、皇族だから何だかんだと何もされないと思っているのならば大間違いだからな?」


 そしてカイザルはそこまで一気にはなすと『冗談とかではなく本気で殴るからな』と最後に言い放ち、件の女性と一緒に私の前から居なくなるではないか。


 その、あまりにも失礼極まりない態度に私は怒りを通り越して呆然としてしまい、言い返す事すらできなかった。


 そしてカイザルがいなくなって数秒後、私はカイザルに言われた言葉を少しずつ咀嚼していくにつれて怒りでどうにかなりそうになる。


 カイザルの癖に。


 カイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にカイザルの癖にっ!!


 これ程腹が立ったのは生まれて初めてである。


 それこそ、こないだの一件よりも今日言われた言葉の方が数倍腹が立つ。


 絶対に許さない。 謝罪をさせた上で私の奴隷にさせ、一生をかけて今日の事を償わせてやるっ!!


 そう思いながら私はカイザルがいなくなって行った方向を睨みつけるのであった。

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