第191話 私から見ればバレバレ


 結局、帝国は私の事をどうでも良い存在(重要な事は伝える必要のない存在)だという評価をしている事が分かってしまう。


 そもそも何故オリヴィアは私のお父様と隣国へ行き、私はそれに呼ばれなかったのか。


 それは私よりもオリヴィアの方が帝国的に見ても、お父様から見ても重要な存在であるという事ではなかろうか?


 このオリヴィアも今こうして私相手に頭を下げて従順なふりをしているのだが、心の中ではどのように思っているのか分かったものではない。


 もしかしたらオリヴィアも心の中では私の事を見下しているかもしれない。


 そう思うとこのオリヴィアの謝罪にどのような意味があるのだろうか?


「…………もう良いわ。 申し訳ないのだけれども今の私にはあなたの謝罪にどれほどの意味があるのかが分からなくなってしまったわ。 むしろあなたに頭を下げられているという状況が余計に私を腹立たせてしまっているの。 理不尽だと自分でも理解しているのだけれども、このドロドロとした感情を自分でもどうする事もできないのよ」

「……リリアナ様……っ」

「だから、今はそっとしておいてちょうだい」

「…………わ、分かりました」


 オリヴィアとの関係は私が物心つく前からの付き合いである為、私はオリヴィアの事を信用したいと思っているのだが、それとは裏腹に『心の中ではオリヴィアも私の事を見下しているのだろう』と思ってしまっている自分自身が嫌になるし、余計に感情がぐちゃぐちゃになって冷静な判断ができず、オリヴィアに対して余計な言葉を投げかけてしまいそうで怖い。


 そして、そういう時に限って悪い事は続くもので、目の前からカイザルが件の女性を侍らせてこちらへと近づいて来るではないか。


「ちょっと止まりなさい……っ!」


 あの日の事を思い出すと声をかけるのすら怖いのだが、あのカイザルに対して自分が恐怖心を抱いているという事実に腹が立ち、結果私はカイザルへと声をかける。


 当初こそ恐怖心の方が上回っていたのだが結局カイザルは私に対して何か今までの報復をしてくるなどという事も無く普段通り過ごしているのを見るに、皇族である私に対しては流石のカイザルも何もできないのだろう。


 あと、何だかんだ言ってもカイザルは私の事を密かに愛しているという事も、私から見ればバレバレなのである。


 そうだという事に気付いてからは不必要にビビる事は無くなったのだが、それと同時に『私という女性がいながら何で他の女性に手を出すのか?』という怒りの感情が芽生えて来る。



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