第190話 私という存在の立ち位置


 流石にいくら何でも一週間もの間、雇い主である私に対して何の説明もせず無断でいなくなっているというのは腹も立つというものである。


 そもそもオリヴィアに関してはカイザルが隠していた自身の能力を表に出したあの日、私との婚約をかけた一戦があったあの時あの場所にはおらず、その為後日カイザルと出会った時に今まで通り吠えながらカイザルの事を貶していたではないか。


 そんな彼女が何も告げずにどこかへ行くとは考えにくい。


 一体オリヴィアはどこへ行ったというのか。


 オリヴィアがどこに行ったのか分からないという事も腹が立ってくる。


 それと同時に、オリヴィアが無断で私の元から消えるというのが考えられない為最悪の事態すら頭に過り始めていた。


「リ、リリアナ様っ!! ただいま戻りましたっ!!」


 もしオリヴィアが私の元へ戻ってきたその時はこっ酷く叱ってやろう。


 そんな事を思っていたその時、なんの前触れもなくオリヴィアが私の元へとやって来るではないか。


 そんなオリヴィアの表情は、私に対して悪いとすら少しも思っていない事が窺えて来るような表情をしており、その事からも私へ謝罪をする気がさらさら無いという事も伝わってくる。


 その事が更に私を苛立たせる。


 そもそも私の側仕え兼護衛であると言うのであればいなくなる時にその旨を伝える事は勿論の事、戻って来るのであればその旨を私へ事前に伝えるのが当たり前でありマナーではないのか?


 これは私に対しての侮辱と捉えてもいいのだろうか?


 まさかオリヴィアがここまで常識が無いとは思わなかった。


「…………今までどこへ行っていたのかしら?」

「へ? 皇帝陛下から何も聞いていなかったのですか?」

「……なるほど、そうやって私を見下しているのかしら? 皇帝陛下の娘であるにも関わらず何も知らないのですか? と」

「い、いえっ!! まさかっ、そんな事を思っている訳がないじゃないですかっ!!」

「まぁ良いわ。 それで何処へ今まで、それも私に無断で行っていたのかしら?」

「それは、皇帝陛下と一緒に隣国である聖王国へと一緒に行ってましたっ!! その旨を皇帝陛下からリリアナ様へと連絡が来ているものと思っており、何も知らせずに発ってしまった事をお詫び申し上げます……っ!!」


 そしてオリヴィアは本当に皇帝陛下から連絡があったものと勘違いをしていたようで、土下座をする勢いで私に謝罪をして頭を下げるではないか。


 それとともに、今この帝国での私という存在の立ち位置がなんとなく分かった気がした。

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