第189話 なんて罪深い女性なのかしら
しかし、逆にあの時カイザルとの婚約を破断にし、ダグラスと婚約を新たに結ぶ前に本来の力を出してダグラスをボコボコにしてくれて良かったのかもしれない。
それは言い換えるとカイザルが私との婚約関係を破談したくなかった、私を弟であるダグラスに奪われたくなかったという事ではなかろうか?
いや、そうに違いない。
むしろそうでなければ、私との婚約を破棄したいと思っているのであれば、あの時わざとダグラスに負けて、婚約を破談した上でダグラスをボコボコにすれば良かったのである。
そして決闘で勝った方が公爵家の跡取り、そして私の婚約者となれる権利を得られるという条件の元でカイザルはダグラスをボコボコにしたのである。
「ふん、ゴミクズの割には見る目がある事だけは褒めてやるべきかしら?」
しかしながら、私という婚約者がいるにも関わらずここ最近はどこからか連れてきた自称聖女とかいう女性を隣に侍らせているではないか。
本当は私を横に置きたいのだが、それを私に言う度胸も無ければ、言えない事の照れ隠しであろう事は分かるのだが、だからと言って別の女を侍らすのはいかがなものか。
普通は私の事が好きであるのならば、隣に女性を侍らせるなんで事をしないだろう。
そんなところがクズで間抜けであると思わずにはいられない。
そして、私の思考はループに陥ってしまう。
ここ最近ずっとこの調子である。
確かにカイザルの強さを知った私はあの日以降少しばかりカイザルの事を怖いと、最初の数日間は避けていたのだが『よくよく考えてみればカイザルは私の事が好きなのではないか?』と分かってからは今までカイザル相手に怖がっていたのが馬鹿らしくなってきて今に至る訳で。
完全にカイザルに対して恐怖心が無くなったと言えば嘘になるのだが、カイザルが私の事を『弟のダグラスに奪われたくないくらいには好き』だという事に気付いてからは『愚図でのろまで使えないゴミ』という以前まで抱いていたカイザルの価値観のほうが強くなって来ている。
しかしながらそれも仕方のない事である。
私程の美女を前にして正気でいられる男性などまずいないのだから。
あぁ、なんて罪深い女性なのかしら……。
「それにしてもオリヴィアは一体どこに行ったのかしら?」
当初こそ私の側仕え兼護衛という仕事をサボっているのだと腹が立っていたのだが、無断でいなくなってから約一週間以上もいないともなれば少しばかり心配になってくる。
とはいってもそれとは別に怒りのボルテージも順調に上がってきているのだが……。
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