第188話 カイザルが全て悪い





 つい最近まで学園内の派閥は私かクヴィスト家の次男であるダグラスかの二グループに分かれており、そしてあの日私と出来損ないであるカイザルとの婚約解消から優秀なダグラスと婚約することによって一つに纏まり巨大勢力になる筈であった。


 そしてその勢いのままダグラスと私が結婚し、次期皇帝とその妃としてその座に着く筈だったのだ。


 それが今や表向きは私とダグラスの二派閥ではあるもののここ最近の私とダグラスのカイザルに対する態度が百八十度変わってしまったせいで私たちに対して不満を募らせ始めた者たちと、そしてあの日あの場所にいた者たちの、派閥とまではいかないまでも新たに二グループでき始めているのは、生徒たちの態度を見て感じ取れてしまう。


 ちなみにあの日あの場所にいた者たちは表向きは私またはダグラスの派閥なのだが、カイザル相手には一切関与しないであろう事が簡単に予想できる。

 

 その事からも、なんならカイザル派閥と言っても良いだろう。


 それはそれで腹が立つのだが、私が今最も腹を立てているのは、カイザルが新しい女性を聖王国から特待生としてこの学園へ入学させ、常に侍らせているという事である。


 元とはいえ私という婚約者がいたというのに……。 普通であればまず初めに私へ婚約を再度結んでくれないかと懇願しに来るものであろう。


 流石にここまでコケにされて怒らないものはいないだろう。


 これが嫉妬なのか、ただ単に私の女性としてのプライドを傷つけられた怒りからくるものなのかは分からないのだが、それでも腹が立っているのは間違いない。


 そもそも初めからカイザルが自らの能力を隠さなければこんな事にはならなかったのだ。


 その点からしてもやはり誰が悪いとなるとカイザルが全て悪いだろう。


 あとは、兄弟の癖に兄の実力を見抜けなかった上に私との婚約持ち掛けてきた使えないダグラスである。


 そう考えれば私は兄弟間のいざこざに巻き込まれた被害者なのではなかろうか? いや、どう考えても私は被害者であろう。


「まったく、父親であるガイウスは『少しばかり居なくなる』という置手紙を置いたっきり影を数名連れてどっかへ行ってしまい音沙汰無いし……なんでもこうもここ最近のわたくしはついていないのかしら? しかし、ダグラスと新たに婚約関係になる前に、ダグラスは全く使えないという事が分かったのは不幸中の幸いだったのかもしれないわ……」


 もしダグラスと婚約しなおしてしまってからダグラスの無能っぷりを知ってしまったとしたら想像するだけでもゾッとする。

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