第187話 シシルさん頑張れ
その事をカイザル様に伝えると、カイザル様は苦笑いをするだけである。 その事からもカイザル様はこの現状を変えようとしていない事が窺えてくる。
これでは奴隷も不満が溜まるのも分かるというものだ。
「そうなのよっ! もっと言ってやりなさい、ヒルデガルドッ! あの頭のおかしいガイウス皇帝陛下を相手に真正面から殴り勝って正義を貫いたんですものっ!! ご主人様がその事を誇らないのであれば奴隷である私がご主人様の代わりに誇るしかないでしょうっ!?」
「いや、というかシシルはいつでも奴隷から自分の意志で解放してもらって良いんだが?」
「は? ご主人様のどれいという立場がなくなったらせっかくできた縁が無くなるのでしょう? それともなんですか? 結婚して子供を作ってくれるとでも言うんですか?」
「いや、なんでそうなるんだよ? 普通に一般人として生活できるというメリットがあるだろう? 胸元にある隷属紋を隠して暮らす必要も無ければ、隷属紋がバレて他人から奴隷だと蔑まれる事も無いんだぞ? どう考えても隷属関係を断った方が良いに決まっているのにどうしてこう頑なに奴隷のままでいようとしているのか俺には分からないんだが?」
そしてカイザル様はシシルさんに対してそんな事を言うのだが、乙女心を分かっていないというか奴隷心を分かっていないというかなんというか……。
これはかなりの唐変木である事は間違いないのでこれからカイザル様に恋するもの、もしくはシシルさんのようにカイザル様の奴隷となる者は苦労するなぁーと思ってしまう。
そして、そんな唐変木なカイザル様だからこそシシルさんは隷属関係を解消したくないというのもあるのだろう。
「え? なんでヒルデガルドがまるで『この唐変木具合だとシシルが可哀そう』みたいな表情をしているんだ? いや、まさか本当にそんな事を思っている訳ではないよな?」
「そのまさかですが?」
そういう所は敏感に感じ取れるのに、何故自分にむけられる好意の感情となると途端に鈍感になるのだろうか?
「これは今まで好意的な感情を向けられてこなかったから、その弊害がでてしまているのでしょう。 だからこそ私はこれからもご主人様には好意的な感情をぶつけていくつもりよ」
そう力強く話すシシルさんは、なんだかんだでとても幸せそうなので、この二人はこの関係だからこそ良いのかもしれないと思う。
そんなことを思いながら私は心の中で『シシルさん頑張れ』とエールを送るのであった。
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