第184話 言ってしまった
それに、カイザル様本人が良いと言っているのであり、私は確かに躊躇した事は確かである。
なのでこの場合は、悪いのは私ではなくカイザル様なのである。
私のような小娘一人であれば、公爵家とういう立場ならばその権力で自分の吐いた言葉も無かった事にできるのだろうが、カイザル様はそのような事はしないと、根拠はないのだがそう思ってしまう。
そして実際にそうなのだろう。
それは『公爵家として』というものではなく、どちらかというとカイザル様だからそうしそうと思えるのだ。
「ぜ、絶対に怒らないですか?」
「あぁ。 そんな事では怒りはしない」
「ほら、カイザル様もそう言っているのだから、いつまでもそうやってもじもじとしていないでさっさと言ってはどうなのかしら? 少し女々し過ぎでは?」
しかしながらだからと言ってやはり、いきなり直球で聞く勇気はないので一度『本当に聞いても良いのか?』とクッションを挟んで聞いてみる事にする。
するとカイザル様は『そんな事では怒りはしない』と言ってくれるのだが、カイザル様の側にいるシシル・シシルカとう名のエルフが突っかかってくる。
しかも、聞けばこのシシルというエルフはカイザル様の通う学園の講師だというではないか。
それなのにカイザル様の側にいるというのはある意味で職権乱用ではないのか? と思わざるをえない。
しかしながらカイザル様がシシルに対して何も言わないのであれば、私がシシルに対してあれやこれやと指摘するのは間違っているだろう。
「まぁ良いではないか。 それに、身の安全の為とはいえいきなり他国に連れていかれたのだから、少しでもヒルデカルドの不安を取り除けるのであればそうしてあげるべきだと俺は思うが?」
「……出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした」
「いや、シシルも俺の事を思っての発言だろうから、その件に関しては咎めたりはしない。 だから謝罪する必要も無い」
「あ、ありがたき幸せっ!! これはもう私とカイザル様との間に子供ができるのも時間の問題では?」
「それは無い」
そしてカイザル様とシシルさんがある程度会話を交わし、和やかな雰囲気に変わり始めたところで私は意を決して発言する。
「それで、私の疑問に思っている事なのですけど……なんでカイザル様は学園で、約一名を除き教師にも生徒にも嫌われているのでしょうか?」
言ってしまった。
吐いた唾は飲み込めないように、吐いた言葉もまた飲み込めない。 後はなるように成れだ。
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