第183話 言われ慣れているしな


 そんなカイザル様が何故学園では嫌われているのだろう?


 確かにカイザル様は、口調はぶっきらぼうで態度も横柄ではあるのだが、だからと言ってあそこまで嫌われなければならない程の事かと言われれば、流石に違和感があると私は思ってしまう。


 特に、ここ数日カイザル様の近くで一緒に過ごしてみた感じ、元婚約者のカイザル様に対する嫌悪感は異常と言えよう。


 端から見てもそう見えるのだから私が思っている以上に嫌っているのだろう。


 むしろ学園の生徒や元婚約者たちの態度を見る限り嫌っていると言うよりかは見下していると言った方が正しいかもしれない。


 その事がただただ謎であり、気にはなるのだが、だからと言ってカイザル様本人に聞いて良いものかどうか分からず、聞けずにいるといった感じである。


 人間面白いもので、ダメと言われれば言われるほど気になる訳で……。


「どうした? 俺に何か聞きたいことでもあるのか?」


 そんな態度が出てしまっていたのであろう。 そんな私の態度を見たカイザル様が何か聞きたいことがあるのかと聞いてくるではないか。


「そ、それは……えっと……あ、はい。 あります」


 そして私は咄嗟に嘘を吐いて乗り切ろうと思ったのだが、カイザル様もそれに感づいたのかづづいと顔を近づけて『何も無いわけがないよな?』と目線で訴えられては、流石に『何も無いです』とは言えなかった。


 ここで何も無い言える勇気が私は欲しかった。


「やっぱりな。 めちゃくちゃ顔に出ていたからな。 お前」

「そ、そんなに出ていましたか?」

「それはもう嘘が下手な幼児くらい分かりやすかったぞ?」

「ぐぬ……」

「それで、俺に聞きたいことって何だよ?」


 流石に子供の吐く嘘レベルで分かりやすいと言われてムッとしてしまうのだが、実際に感づかれてしまっているので言い返せずにいる私にカイザル様が『聞きたいこと』について聞いてくるではないか。


「さ、流石に失礼な内容なのでいくらカイザル様がそう仰ってくれても流石に言えないというかなんというか……」

「それって逆に気になるんだが?  何を言われても怒らないから言ってくれないか? 逆にここで言われない方がストレスになりそうだ」

「ほ、本当に怒らないですか? かなり失礼な事であるという自覚があるのですが?」

「あぁ、全然かまわないというか、もうそういうのは言われ慣れているしな」


 そして私は保険としてかなり失礼な事を言ってしまう旨をカイザル様に伝えるのだが、その私の言葉(この言葉が既にかなり失礼なのだが)に対して『言われ慣れている』と言われてしまっては『言いたくない』とは言えなくなってしまうではないか。

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