第177話 王者の技


 折れたっ!! 俺の腕が折れたっ!!


 ブランシュ聖王がいきなり俺に飛び掛かって来たかと思うと次の瞬間には、俺の右腕にまるで蛇のように絡みつき、引きはがす間もなく俺の右腕は曲がってはいけない方向へ曲がっているではないか。


「グギギギ……っ!」


 そして折れた腕の痛みで叫び、床を転がりたいのをグッと堪えてガイウスとブランシュ聖王を睨みつける。


「ほう、流石カイザル様から頂いた力であるな。 確か『小魔法上下のコラボガチャで当てたサブミッションスキルセット』とは言っておったのだが、それがどういう意味を持っているのかは皆目見当もつかないのだが流石の威力と言えような。 恐らく接近戦かつ一対一では無類の強さなのではなかろうか? そして『サブミッションこそ者の技よ』とも言っておった通り皇帝である俺ではなく聖であるブランシュにピッタリの技でもあるのだろう」

「なるほどのう。 そして、まさかこうも簡単に人間の腕を折る方法があるとは思わなんだ。 そして、他にもスキルがあると言うことはまだまだリュシュリーで実験できるという事じゃなっ!! ほれリュシュリーよ。 腕一本で脂汗をダラダラ流しておってはこれから先耐えられぬぞ?」

「は? へ? 他にもスキルがある? 俺で実験する?」


 そしてブランシュ聖王は、聞き間違いでなければ俺の身体を使って新しく手に入れたスキルの数々を試していくと言うではないか。


 その隣にいるガイウスに至ってはまるでこれから喜劇を観賞するかのような表情をしており、ブランシュ聖王は玩具を目の前にした子供のような表情をしているではないか。


 その奴らの表情を見ても、俺を逃がす気がさらさらないどころか、ただの余興、または遊びとしか思っていない事が窺えて来る。


「き、貴様等……っ! この俺にこんな事をしてただで済むと思っているのかっ!? この聖王国を裏で操っているのが誰だと思っているっ!? この俺だぞっ!!」


 そうだ。 所詮ブランシュ聖王はこの聖王国では俺の傀儡でしかないのだ。


 いわば最早この聖王国は俺の国であると思って良いだろう。 


 何をそんなに恐れる事がある。


 この後にこいつらを聖王国総力をもって殺しに行けば良いだろう。


「こいつ、開き直りやがったのじゃっ!! これは流石にもう許しようがないのう。 というかまさか我の事を傀儡とでも思っておったという事にショックじゃのう……。 こうなってしまっては殺さなくてはいけなくなるのじゃ。 流石に国を乗っ取り、それだけではなく我を殺そうとしている奴を生かしておけるほど我はお人好しではなからの」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る