第171話 もうやだこの子




「その場合はカイザル様の寿命を強制的に引き延ばすか、私も一緒に死ぬわっ」


 そう俺が言うと何故かドヤ顔でそんな事を言ってくるシシル。


 その回答を聞いた俺は普通にドン引きなんだが……。


「…………カイザル様、奴隷の躾はちゃんとしといた方が良いかと思うんですけど……。 彼女、シシルさん普通に怖いんですけど……?」


 そしてそんな俺達のやり取りを見たヒルデガルドがそんな事を言ってくる。


「いや、分かってはいるのだがコイツの責任は俺が取らなければならないのか? いやまぁ確かにコイツを奴隷にしたのは俺なのだが、ぶっちゃけシシルが俺の奴隷から解放されたいと思った瞬間には奴隷の術式は解術されて解放されるようにはしてあるんだけど……?」

「自分で拾って来た奴隷ならば最後まで面倒を見なさい」

「あ、はい……」


 何で俺が子犬を拾うだけ拾って散歩をしなくなった為母親から叱られるような対応をされているのだろうか。


 解せぬ。


 しかしながら今ここで口論をした所でこのシシルという奴隷の所有者は俺であるので、結局のところ誰に最終的な責任があるのかと問われれば俺になってしまうだろう。


 奴隷の不始末は主人の躾不足というヤツだ。


「はぁ、まぁ良いよ。 好きにすれば」

「え? ではこれから私とご主人様であるカイザル様との子供を作りましょうっ!! あぁ、いまからどんな子供が生まれてくるのか非常に楽しみで仕方がないわねっ!!」

「え? 作らないぞ?」

「え? 今ご主人様は『好きにすればいい』とおっしゃったのを私は聞き逃さなかったわよ?」

「いや、それは『死がふたりを分かつまで』の件の事であって子作り云々の話でもなければシシルがやりたい事を肯定するという意味ではねぇよ……っ!」


 もうやだこの子……。


 とりあえず今日は夜這いされるのが怖いのでいつもよりも厳重に寝室には結界を張る事にしようと思う。


 そもそも朝起きたら寝室に、三重に施している結界が一つ解術され始めている事を俺は知っているからな? もしかしたら俺に寝返ったふりをして寝込みを襲って殺そうとしているのかもと思っていたのだが、そうではなくて性的な意味で襲って子種を奪いに来ている可能性があると分かって、寧ろ命を狙われるよりも引いてしまう。


「ならばそう命令してくださいな。 私、まだちゃんとご主人様から命令されていないんですけど? これでは使用人と何ら変わりないわっ!! 私を奴隷として縛っているという証明をして欲しいのだけれども? さぁ、早く命令して頂戴っ!!」

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