第167話 もやっとしてしまう
いったいどういう事であろうか?
カイザル様は公爵家ではないのであろうか?
これではまるで平民に対する貴族の態度よりも酷いのでは? と思えてしまう程周囲からの態度は酷いものであった。
「…………お、おはようございます……っ カイザル様っ」
そんな中、一人の女性がカイザル様へ丁寧な挨拶をしてくる。
周囲の貴族達がざわついているあたり、この女性の爵位が高い事が窺える。
しかしながらカイザル様に挨拶をして来た女性は何かに怯えているようで、手先などがカタカタと震えているのが目に入ってくる。
「リリアナか……。 オリヴィアはどうした?」
「……あ、貴方が………っ! 貴方が何かしたんでしょうっ!! 教えなさいよっ!!」
「あ?」
「ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!! 許してくださいっ! て、敵対するつもりはありませんっ!!」
そう思っていたのだが次の瞬間件の女性はいきなり怒り出し、そして次の瞬間にはカイザル様に殺されるのではと思える程の勢いで謝罪し始めるではないか。
その様子から見てもこの女性の精神状態は普通ではない事が分かる。
そして、この女性がカイザル様に謝罪をするのを見た周囲の貴族たちは、信じられないようなものを見るかのような表情をして、ざわつき始めるではないか。
いったいカイザル様がここ帝国でどのような立場であるのか、そしてこの女性とカイザル様との関係がどのようなものであるか詳しいところまでは分からないのだが、何かあるだろう事だけは分かる。
そしてその事を聞いて良いのかどうかすら分からない関係であるというのが少しだけ歯がゆく思ってしまう。
恐らく私は既にカイザル様の事を友好的に思い始めているのであろう。
それは自分でも分かるほどには出会った当初と今とではカイザル様の事を好意的に思い始めているのだから当たり前と言われればそうなのだが、今まで私は男性に対して好意的なイメージを抱くことが無かった為いまいち自分の感情に自信を持つ事ができないでいる自分がいる訳で……。
何故だか知らないのだが、カイザル様は今まで出会ってきた男性たちのようにねっとりとした目線で私の身体を見つめてこないというのも、身体が発育してきてからは初めての経験であった。
そういう男性もいるのだな、と思う反面、好意的な感情を抱き始めるにつれてそれはそれで『私に興味がない』という事でもある為なんだかもやっとしてしまう。
その矛盾した感情を自分の中でどう処理すればいいのかすら私は分からない。
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