第163話 流石にそれは無いか



 自暴自棄になっていたとはいえかなりカイザル様には初手からご迷惑をかけっぱなしになってしまっている為、これからは少しでもご迷惑をかけないようにしなければ、と気を引き締める。


 それは、迷惑をかけないという事は勿論のこと、私を匿うにあたってできるだけ負担になるような事はしないという事でもある。


 そしてその『負担』というのは勿論金銭面の事も含まれる。


「いえ、ベッドがある部屋を貸していただけるだけでも私は満足しておりますので、お気になさらず」

「そうか? まぁ、流石に化粧台とベッドのみという部屋ではその内何かと必要なものも出てくるだろう。 その時にでもまた言ってくれれば用意するから」


 そしてカイザルはというと、誹謗中傷を言われた平民相手に何故か世話を焼こうとしてくるではないか。


 何故そこまで世話を焼いてくれるのか、いくら考えても結局理解ができなかった。


 プレヴォのように女に飢えている等であればまだ理解はできるのだが、カイザル様はあの女性の私でも見とれてしまう程の美貌を持つエルフのシシルを奴隷にしている上に、あのプライドが高く高慢で他種族を見下しているとして有名なエルフから行為を持たれているのが見ただけで分かる。


 その事からも見てもカイザル様が女性に飢えているという事もないであろう。


 だからこそ私の世話を焼こうとしている事が理解できないのである。


 ま、まさか……ただ純粋に好意から出た行動なのだろうか? いや、流石にそれは無いか……。


 残った選択から導き出される答えに、流石にそれは無いだろうと、その答えを一蹴する。


 貴族というのは良くも悪くもそういうモノであるという事を私は知っている。 何か行動にあった見返りが無いとまず動かないだろう。


 あのプレヴォでもそうなのだからカイザル様であれば猶更であろう。


 そしてその理由が分からないというのは、それはそれで少しだけ怖くもある。


「あ、忘れる所だった。 とりあえず明日から短期間の転入という形で俺が通う学園に一緒に登校することになるから。 制服は後で使用人がサイズを測った上で身体に合った制服を持って来てくれるだろうから受け取るように。 まぁ、身体にあったと言っても所詮は複数のサイズを予め作り置きしている制服を学園で購入するだけなのでオーダーメイドと比べると多少は着心地に違いはあるだろうが、見た目的にはそう変わらないだろう」

「は、はい。 分かりました。 …………へ? 入学? 私が? カイザル様の通っている学園へ? 付き添いではなく入学?」


 

 

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