第161話 普通は不敬罪で打ち首

「ちょっと、流石に初対面相手に失礼ではないでしょうか?」


 そしてこのエルフは初対面に関わらず私の事を見下し、蔑むかのような発言に流石の私も言い返さないと気が済まなかった。


 エルフという種族は排他的かつ他の人間種を見下す傾向が強いというのをどこかで耳にした事があるのだが、それはどうやら本当の事であったようだ。


 まさか、出会って早々見下している事を隠しもせずに蔑まれる程とは思わなかったのだが。


「あら? それをあなたが言いますか?」


 しかしこのエルフは私に対して『お前がそれを言うのか』と先ほど以上に見下した目線を向けながらそんな事を言うではないか。


「いえ、私はあなたのように初対面の相手に対してそのような言葉を放つなどという事は致しませんもの」


 その言葉に私はすかさず言い返すのだが、件のカイザルのから『シシル』と呼ばれていたエルフは私を馬鹿にしたような表情と口調で言い返して来る。


「あら、そういうあなたは私のご主人様であるカイザル様に対して先ほど、どのような物言いをしたのかもう忘れてしまったのかしら? 確か、かなり酷い事を言っていたように思うのだけれども、

あの暴言の数々は一体何だったのかしら? それとも人族は自分の言った言葉の責任も取れないのか、口にした傍から忘れてしまっているのか、どちらかしらね?」

「ぐぬ……っ」


 そして、私はシシルに言い返された言葉に対して何一つ反論する内容が思い浮かばず、黙ってしまう。


 確かに、私は出会ったばかりかつわざわざ関係ない私を助けてもらったカイザル相手に先ほどまで、この理不尽過ぎる運命に対する怒りをそのままぶつけてしまっていた事を思い出す。


 私がカイザルに犯されてしまったとかならば分かるのだが、犯されるどころかまだ何もされていない段階で勝手に『カイザルもどうせ私の身体が目当てなのだろう』と決めつけて暴言を吐いていたのは紛れもない事実であった。


 自暴自棄になっていたとか、今まで吐き出せる相手がおらず、一度吐き出してしまったら今まで溜まりに溜まった不平不満が一気に溢れ出してしまったとか、言い訳はいくらでも言えるのだが、それを言ったところで私がカイザルに放った暴言の数々が消える訳ではないのだ。


「まったく、カイザル様が心優しい方で良かったですね。 普通あなた如きが公爵家を継いでいないけれどもご子息であるカイザル様に対してそのような暴言を吐いたら、普通は不敬罪で打ち首ものですよ?」

「…………た、確かに……言い訳のしようも無いですね……。 先ほどの暴言の数々、申し訳ございませんでした」

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