第158話 お仕置き






 深夜、時計の短い針が真上を少しだけ過ぎた頃。 とある邸宅の一室からベッドが軋む音と少女の喘ぎ声が廊下まで響き渡っている。


 少し前であれば使用人に聞かれでもしたらと思うと、とてもではないが邸宅でこのような行為をする事などできなかったのだが、ブランシュが聖王となり、そして俺もまた自動的に宰相となれた為、俺に楯突いてこれるほどの者がいなくなったというのもあるのだが、少しでも怪しいと思える使用人たちは総入れ替えしたというのも大きい。


 ちなみに新しい使用人の出所は全て調べており、貧乏下級貴族からの三女以下の女性ばかり集めてきているので、もし逆らったりするとそいつの家ごと潰すと初めに脅しており、その脅しはかなりの効力を発揮しているようである。


 それがどれだけの効力かと言うと、夜伽に誘っても断らずに来るほどである。


 少し前であれば高位の貴族の出である年長の女性や男性の使用人が咎めに来ていたのだが、今はそんなうざい小言を言いに来る者もいない。


 もし今そんな奴が居たのならば即実家を潰す手配をしたうえで、家族が落ちぶれて行く姿を見せた上で処刑してやろう。


「ったく、なんで俺がこんな時間になるまで仕事をしなければならないのだ。 それもこれも全部あの使えない聖王のせいではないかっ!!」


 そしてせっかく仕事面でも私生活面でも俺の思い通りの世界になってきたと言うのに、ここにきてブランシュが自分勝手に動くせいで家に帰るのも日が落ちてからやっと帰れるという状況である。


 初日でこれである為、こんな毎日がブランシュが戻って来るまで続いて行くと思うと怒りで頭の中が真っ白になってしまう。


「あぐぅ…………っ」


 そして、気が付いたら俺は使用人の腹や顔を怒りに任せて殴っていたらしく、顔が腫れ、動かなくなった使用人がベッドに横たわっているではないか。


 くそ、またベッドを無駄に汚してしまったではないか。


 それに、まだ生きているとはいえもうこの使用人は使い物にはならないので捨てなくてはいけない。


 それもこれも全てブランシュのせいではないか。


 ブランシュが帰ってきたらどのようなお仕置きをしてやろうか。

 

 それこそ、俺の性の捌け口にしてやってやりたいところではあるのだが、もしその事が万が一外にばれでもしたら折角ここまで上り詰めて来た地位も何もかもが砂上の城のごとく消えてなくなってしまう為なかなか一歩踏み込めないでいる自分が腹立たしい。


 とりあえず利権をもう少し増やしてもらう事でチャラにしてやろう。 

 

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