第156話 男性を集めて来ている



 そして俺が今回の件の黒幕を知っていると言うと、ブランシュはホッと胸を撫で下ろすではないか。


「なんでホッとしているのだ? 悪党一人取り逃がしたところでそれがどうだと言うのだ?」


 そう、俺のように『自分は裁かれる立場ではなく捌く立場である』などと勘違いしている奴らを叩きのめす事に快楽を感じるなどという訳でもないであろうに、そういう趣味嗜好が無いのであれば何故そんな小物一匹にそこまで安堵できてしまうのであろうか。


 俺はその理由が分からず、ブランシュに聞いてみる事にする。


 流石に本心をそのまま言うというような事はないとは思うのだが、それでもブランシュの感情が少しは理解できるかもしれない。


 理解できたところで何だと思うが、それでもこうしてカイザル様から新たに教えて頂いた安全圏にいると勘違いしている馬鹿を潰すという快楽を知れたのだから、ブランシュの考えを理解する頃で新たな快楽を俺は手にする事ができるのかも知れない。


 そしてもし知ることが出来たのならば、今回目の前のプレヴォとかいう雑魚、そしてその後ろに隠れている小物を潰す時により深い快感へと俺を誘ってくれるかもしれないのである。


「一体何を言っておるのだ? 国の中に巣くう獅子身中の虫の巣を潰す事ができるのじゃぞ? そしてそれが潰せないかと思った所、ちゃんとその虫の巣の中心となる人物が誰か把握していると知ったら安堵するのも仕方ないじゃろっ!?」

「そんなものか?」

「むしろお主も一国のトップであるのに何でこの感情が分からぬのだっ!? というか、なんで他国まで来てこんな慈善事業みたいな事をしているのか我にはさっぱり分からぬっ!! お主はそもそもこんな、他人の為に自ら動くような事をするような男ではなかった筈じゃっ!! 自国の民ですらそれなのに他国にまで出向いて世直し道中の様な事をしだすなど、むしろ我からすればそっちの方が余計に理解しがたいのじゃがっ!?」

「ふむ、そうかそうか……。 しかしながら俺は今も昔も根本的な部分は何一つとして変わってはおらん。 ただ、カイザル様が我の行く先のないと思ってムシャクシャしていた感情の行く先を示してくれたおかげで今の俺がいるのは確かではあるの。 あと、どさくさに紛れて逃げようとしても無駄だぞ? プレヴォよ。 そもそも今日はわざわざお前の為に、お前のような奴が好みであるという男性を集めて来ているのだ。 今夜は長いと思う事だな」


 そして俺とブランシュが会話をしている隙にさりげなく逃げようとしたプレヴォの前を下着一枚の屈強な男たちが扉の前でプレヴォが逃げるのを阻止する。


 

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