第155話 約束は違えないよな?



 そして、自分が絶対的強者であると思っている者をこうして痛めつける快感を教えてくれたカイザル様には本当に頭が上がらない。


「はぁ? お前は何を言っておるのだ? 本当の黒幕がどうとか今は関係ないであろう?」

「え? は? そ、それは一体どういう事であるか……?」

「いや、だから今ここでお前を断罪するという意味だが?」

「ちょっ、ちょっと待ってくださいっ!! 今我を断罪してしまうと、我の後ろにいる黒幕を暴き出す事ができなくなるのだぞっ!? それでも良いと言うのであるかっ!?」

「そ、そうじゃぞガイウスッ!! ここはプレヴォの言う通り取引を行っても良いのではないかと我は思うのじゃっ!! た、確かにプレヴォの行って来た事を鑑みれば到底許せるような事ではないことは明白なのは理解できるのじゃが、黒幕を潰さないかぎりは結局同じような人身売買に売春を他の領地で、それもプレヴォよりも更に地下へと潜ってしまい下手をすれば本当に一生かけても黒幕を暴くことは出来なくなってしまうかもしれないのじゃぞっ!? というか、そもそもプレヴォはここ聖王国の民であり貴族であるのじゃっ!! いくら帝国の皇帝と言えども他国の民である事には変わりないっ!! 我の了承を得ずに勝手に罪を裁くのは止めるのじゃっ!!」


 そして俺はプレヴォの命乞いの取引の内容を聞き、どうでも良い内容であった為俺は関係ないと返答する。


 この俺の返答を聞いて涙と鼻水を垂らしながら先ほど以上に感情が籠った態度と声音で懇願して来るのは分かるのだが、なんでそこでブランシュ聖王までもプレヴォへの制裁を一回考え直して黒幕とやらが誰か聞いてみてはなどと言ってくるのか。


 そもそもこいつは始め俺に何て言ってついて来たのか全く覚えていないようで俺は思わず頭を抱えたくなった。


「のうブランシュよ」

「な、何じゃガイウス……?」

「お前は始め何て言って俺について来たのだ? 俺の邪魔はしないと言って付いて来たのではないのか? まさか、一国のトップが口にした約束は違えないよな?」

「く……っ!! す、好きにせいっ!! ただし、プレヴォの件は絶対に外部に漏らすで無いぞっ!! プレヴォの件が黒幕に伝わり、更に闇の底へと逃げる前に我が絶対に炙り出してやるからのっ!!」

「あぁ、その件なのだが、そもそも黒幕は分かっておるのでそこまでする必要は無いかと思うのだが」

「…………そ、それは誠かっ!? そういう事であれば初めからそう言わぬかっ! 馬鹿者っ!!」

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