第153話 腹を括るしかない
であればここはひとつそれに賭けてみるのも良いだろう。
むしろ我が生き残る道はそれしかないので選り好みを言っている場合でもないので、もうこれに全てをベットするしかないのだから腹を括るしかない。
「ちょ、ちょっと待ってくれぬかっ!!」
「あ? 何を待つと言うのだ? もうお前がここで売春及び人身売買、それだけではなく人攫いまで行っている可能性があるという事は、いくら待とうが変わらない事実なわけだが?」
そして我はガイウス陛下の靴を舐める勢いで、
「それで、待って欲しい理由はなんだ? 理由によっては身体のどこかを切り落とすからの?」
そんな我の必死さがガイウス陛下に伝わったのは、我の懇願通り待ってくれるようで何とか綱渡りは落ちずにいられた事に安堵する。
そして我は深く深呼吸をして、先ほど考えていた『他の貴族、それも高位の貴族を黒幕に仕立てて、情報を売る事で生き延びる』という方法を使う為に、緊張で震える唇をなんとか動かして喋り始めるのであった。
◆
「それで、聖王の奴はガイウス陛下の所にわざわざ行ったと?」
「はい。 なんでも『聖王国に来たからにはまず我に挨拶をしに来るのが礼儀じゃろうっ!!』との事です」
「……ったく、バカが。 俺の傀儡であるのならば傀儡らしく大人しくしておけば良いものを。 まだ若いせいか行動力があり、正義感が強いきらいがあるのはどうにかならないものか……。 若い分物事を知らない為騙しやすいが、若いからこそ御しがたいのは目下悩みの種だな」
これでは何のためにブランシュを聖王にしたのか分からないではないか。
この十数年間、俺はブランシュを聖王に仕立て、そして俺の傀儡にする為にどれほどのお金を投資し、どれほどの人間を殺してきたとおもっているのか。
宰相の地位に上り詰めるだけでも血の滲むような努力や、奇麗ごとでは片付けられないような事、それこそ仲の良かった友を殺した事もあった。
そうして宰相という地位に上り詰めたところで聖王がいる限り俺は一生この国のトップにはなれないという事実が、俺はずっと心の中にモヤっとした感情を抱き続けていたのだが、それならば前聖王を殺し、まだ右も左も知らない現聖王であるブランシュを洗脳して俺の傀儡にし、実質俺がこの聖王国のトップになってやろうと思いここまできたのである。
そんな苦労の末に手に入れた地位が、ブランシュ聖王の気まぐれな行動一つで墜とされでもしたら目も当てられない。
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