第151話 気にかけてすらくれなかった癖に


 何故ガイウス陛下が我の地下室の事を知っているのか。


 当初はしらばっくれていたのだが、ガイウス陛下の側仕えから何度か殴られ、それでも吐かない(聖王がいる前で吐いたら死罪は免れないので当たり前なのだが)我にしびれを切らしたのか、我の首根っこを掴んでこの地下室へ迷うことなくやってくるではないか。


 それはまるでガイウス陛下はこの家の地下にある秘密の場所を知っていたかのような足取りであった。


 これがまだここ聖王国の貴族であればまだ分かるのだが、それが他国の、しかも皇帝陛下という所から見て我の隠し事は最早聖王国だけでなく帝国中にまで広がっているとみて良いだろう。


「はて? 我には何の事か全く分かりませぬな。 こんな所があったなんて寝耳に水でございまして、ええ。 それこそ我の家で雇っている使用人の誰かが怪しいのではないかと思いますがね」


 そして、この事から見ても俺の事を売った奴が間違いなく裏にはいる訳で、それは自分の身の安全を引き換えに俺を売ったに違いない。


 どう考えても俺の事を売った奴は俺にこの事業をすすめてきたカトーナ・ロートリンゲン大公以外ありえないだろう。


 そう考えれば我の事が他国である帝国皇帝にまで話が伝わってしまっている事も納得がいく。


 そしてそれは、ここで俺がカトーナ大公を売ったとしても、相手は既にその事を知っているであろう事から情報としての価値はゼロであり、それは俺がここから助かる見込みは無いと言う事でもある。


 今聖王様が我の領地に来てくださり、これから我の快進撃が始まるものと思っていたのに、どこで我は間違えたのだろうか?


「まぁよい。 お前が素直に認めようが認めなかろうがどうでも良いからな。 むしろ俺からすれば簡単に口を割って知っては楽しくない為、むしろそう簡単には口を割らないでいただきたいものであるな」


 そして、そう言いながら俺を見るガイウス陛下の目は、まるでおもちゃを与えられた子供のような目をして我の事を見つめてくるではないか。


 その目に我は思わずゾッとしてしまう。


「これは……これはいったい何なのじゃっ!? この子供たちはどうして地下の牢屋に閉じ込められておるのじゃっ!? しかも、全員栄養が足りていないのかガリガリで、我たちが来ても何の反応もしない程生気が無くなっており、虚ろな目をしているではないかっ!? プレヴォよっ!! これはどういう事なのか早う答えっ!!」


 そして、地下室を見た聖王様が物凄い形相で我に詰め寄って来る。


 今まで我の事など気にかけてすらくれなかった癖に。

 

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