第147話 今になって悔やんでしまう


「そ、それは……っ」

「ほら、何も言い返せぬではないか。 だから俺がここへ来たのであろう」


 ガイウスの言葉に違うと叫び否定したいのだが、否定する言葉が何故か出てこず言葉に詰まってしまう。


 そんな我にたいしてガイウスは『俺の言った通りなんだろう?』というようなどや顔で、我がここの領民たちを蔑ろにしていたからこそここへ来たんだと言うではないか。


「ふざけるでないっ!! お主の手を借りぬともそんなことくらい我がやるわっ!! そもそも我の国の事じゃっ!! 他国の物が口を出し、勝手に動くんじゃないっ!!」

「は? そんな事? じゃぁ何か? お主は『そんな事』と言い捨てるような事を今までやってこなかったのか?」

「ぐぬぅっ!!」


 ガイウスの言葉がいちいち腹が立つ。


 しかしながらその言葉に対して何一つ言い返す事ができない自分こそが一番腹が立つ。


「まぁ良い。 どうせ我はプレヴォにしか興味が無い故、その他の面倒くさい事はお主がせい」

「なっ!? お主は我が国の貴族に何をするつもりじゃっ!? ま、まさかっ、お主はプレヴォのような者が好きなのかっ!?」

「好き、か……。 まぁ、プレヴォのような人物はかなり好きなタイプではあるな。 ちなみにこれからプレヴォがいる邸宅へと突撃するつもりである。 一応プレヴォの邸宅へと出向き、これからプレヴォに行う事についての正当性を書いた手紙をお主にここへ来る前に送った筈で、許可のサインとお主の印が押された返信の手紙も貰ったと思うのだが……まさかあの手紙をお主は読んでいないのか?」

「ぐふっ……。 おっと、涎が。 手紙、手紙ね。 あぁ、あの手紙の事かの。 確かにそのような事が書いてあったような」


 何故だろうか? 今までガイウスに対してかなり強い苛立ちを覚えていたのだが、そのガイウスがプレヴォの事が好きであり、これからプレヴォの宅でくんずほぐれつな関係を迫り、そしてプレヴォは他国とはいえ皇帝という立場のガイウスに対して嫌とも言えず…………と、そんな事を妄想してしまい、怒りの感情などどこかへ吹き飛んでいってしまうではないか。


 こんな感情は初めてである。


 ちなみにガイウスの言う手紙は確かに貰っていたような気がするのだが、当時は眠気が酷く検閲を一度終えている内容の手紙であるという事もあり、緊急性のある内容や敵対するような内容という訳でもない『基本的に我が最終的に内容を確認して印を押し、内容によっては返信するかどうか決める』といったものであった為、しっかりと内容を確認していなかった事を今になって悔やんでしまう。

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