第146話 それがどうしたと言うのじゃ?

「はぁ? 我がお主と同じように国民の事を何も考えていないと……そう申したのか?」


 こいつはどこまで我の事を馬鹿にすれば良いのか。


 流石にガイウスと同じだと言われては無視する事ができずに反応してしまう。


「むしろそれは今までの俺の話であり、俺にとっては市民の幸福度がそのまま帝国の国力に繋がると、とあるお方に教えてもらってからはどう考えても今現在では俺よりもお主の方が国民に対して関心が無いと言えよう」

「ふざけた事を言うでないっ!! 我はお主と違って日々国民に対して何ができようかと考え、そして実際に良いと思った政策などは実際に実行に移しておるわっ!!」


 こやつは、本当に聖王国と戦争をしたいというのかっ!! こんな見え透いた煽りに乗ってはならぬと分かりきっているのだが、それでも我慢できずに怒鳴ってしまう。


 そもそも我はガイウスと違い実際に日々国民の事を思い、そして国民の幸せの為に動いているのだからそんな出鱈目を正面切って言われれば流石の我も我慢など出来よう筈も無い。


「お前、本気で言っておるのか? では聞くが、お主はここの領地に来たのは何年ぶりであるか覚えておるか? お主が若くして聖王になった四年前以降一度も来ておらぬのでは? そしてその四年前も二日間滞在しただけですぐに隣の領地へと移動していったそうだの?」

「そ、それがどうしたと言うのじゃ?」

「どうしたもこうしたも、我がこの領地へと来なければ一生お主は来なかったのではないか?」

「そんなもの、いつ我が来ようが我の勝手ではないかっ!! お主にとやかく言われる筋合いは無いわっ!!」

「ふむ、語るに落ちるとはこの事よな。 ようはお主はここの領地に住んでいる領民はどうでも良いという事ではないか。 さらに言うとお主は気に入った領地しか訪問しておらず、気に入った領地には多額の支援や、僧院への寄付を施しているそうじゃないか」

「そ、それは実際にこの目で見て必要であると感じたから──」

「そう、実際に見て必要と感じたから支援や寄付をおこなったのであろう? であれば何故他の領地も気に入った領地同様に支援や寄付が必要なのではないか? 何ならもっと酷いのではないか? という考えにならないのだ? それは、国民の為ではなく自分が良くいく領地の領民たちからチヤホヤされたいだけで、領民の暮らしを良くしようとは思っていないからではないか? もし本当に国民の事を思っていたのであれば先ほど俺が言ったように他の領地も自分の足で出向き、実際に見て周った筈でろう?」

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