第145話 現実から目を背けて逃げるのか?
「それは俺の方だぞ? ブランシュよ。 何故俺の邪魔をする?」
そして、何故このように他国で好き勝手するのかと問いただそうとするのだが、それに答える事もせず私へ『なぜ邪魔をするのか』と質問で返してくるではないか。
他人の国へ来て、その国のトップが質問しているにも関わらずそれに答えようとしないとは、ふざけているにも程がある。
「質問を質問で返さないで欲しいのじゃ。 お主、私を馬鹿にしておるのかの?」
「馬鹿にしている……そうだな、あぁ、ブランシュの言う通り馬鹿にしているのかもしれぬの。 しかしながら俺は他人の事を馬鹿に出来る立場ではないからの……。 俺もブランシュも自国の民に対してさほど関心が無いという意味では全く同じだからの」
そしてガイウスは言うに事を欠いて『ガイウスと私は同じである』と言うではないか。
「ふざけるのも大概にしろっ!! お主のような独裁者と一緒にするなどいくら何でも失礼すぎるっ!! お主がそのつもりならばこちらにもそれ相応の考えがあるっ!!」
「はて? 先ほどから失礼な物言いをしているのはお主の方ではないか。 そして俺はそのまま返しているだけで、俺の事を失礼だと怒るのならばまずは自分の言動を振り返ってみてはいかがかの? あと、俺に対して独裁者というのも、今までの俺のしてきた行いを見ればそう言われても仕方がないのは承知しているのだが、そう言うお主はどうなのじゃ? お主も俺の事をとやかく言える立場ではなかろう? それで良く聖王などと名乗れたものだ。 俺は恥ずかし過ぎて聖王などとは名乗れないわ」
…………なるほどの、ガイウスの目的がなんとなく掴めて来たわ。 こやつ、我を怒らせて戦争をしたいのだろう。
そしてガイウスの思惑通りに動く訳にはいかないと判断する。
先ほどまではあんまりにもガイウスの態度が失礼過ぎたため最悪戦争という一手も視野に入れていたのだが、むしろガイウスが戦争を望んでいるのだとすれば帝国は既に我が聖王国と戦争をする準備は万端であり、後は切っ掛け次第というわけであろう。
そしてあくまでも『帝国は被害者であり聖王国が仕掛けた戦争である』というスタンスを取りたいのであろう。
危うく罠に嵌められそうになったが、気付いたからにはその手には乗る訳にはいなく。 そして帝国が聖王国を視野に入れて武力を固めているという事を知った以上、我が聖王国は可及的速やかに帝国を仮想敵に想定して軍事力に力を入れなければならない。
「まったく、お主と会話するのも馬鹿らしい。 それでは我はこれにて──」
「現実から目を背けて逃げるのか? もう一度言う。 お前は俺と同じで国民の事など考えておらぬ」
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