第144話 キツく当たるくらい神様も許してくれるだろう


 それだけで俺は自分の中の劣等感が消え去り、優越感と幸福感多幸感が押し寄せてくる。


「わ、分かりました」

「お、分かってくれるかっ!! 流石我が聖王国の貴族じゃのっ!!」

「当り前の事ですので……」

「そして謙虚と来た。 この国の聖王としてこれほど誇らしい物は無いのっ!!」


 そしてブランシュ聖王は俺の事を褒めまくるではないか。

 

 そもそもの話、今までこの我がこうして日陰で孤児に手を出す事しかできなかったのは、表舞台に立つことが出来なかったからである。


 能力的にも知能的にも他の貴族より勝っているのは、客観的に見て分かりきっていたのだが今の今まで他の高位貴族たちから表舞台に上がるチャンスを潰されていたからに他ならないだろう事が今回の事ではっきりしたとも言える。


 しかしながら今回はブランシュ聖王が秘密裏に俺の領地まで来てくれたおかげで高位貴族たちはそれを妨害する事ができなかったのであろう。


 故に今、俺の有能さがブランシュ聖王の知る事となったのである。


 そしてこれから俺の時代が来る事だろう。


 まず考えられるのは男爵よりも上の位の爵位へと陞爵する可能性は極めて高いといって良いだろう。


「それでは我はこれからガイウスと話す事があるから今日は席を外してくれないかの? 挨拶はまた後でお主の邸宅まで行くからの、今のうちに準備でもして待っていてくれないかの?」

「かしこまりました……っ。 それでは、我はここで失礼させていただきます」


 あぁ、今日僧院に訪れでガイウス陛下とオリヴィア聖王がいた時はかなり腹が立って頭が真っ白になったのだがまさかここまで最高な日になるとは、一体誰が分かろうか。


 とりあえず、今は聖女ヒルデガルドの事よりもブランシュ聖王を迎える為の準備を一刻も早くしなければならない。


 ブランシュ聖王を出向かるにあたって、少しでも不備があった場合せっかく俺の元に訪れた千載一遇のチャンスが零れ落ちるかもしれないのである。


 そして俺はすぐさま馬車を走らせて帰宅し、使用人を集め、ブランシュ聖王を迎え入れる準備をさせるのであった。





「それで、我に何か言う事は無いかの? ガイウスよ」


 使えない貴族として有名なプレヴォに対してしたくも無い微笑を向け、行きたくもないプレヴォの邸宅を訪れなければならないという、したくも無い事をしなければならなくなった原因のガイウスへ、そのまま苛立ちを隠す事もせず問いかける。


 こいつさえ来なければこんな事にはならなかなったのだから、要らぬ仕事を増やし、プレヴォの相手をする羽目になった原因を作ったガイウスにキツく当たるくらい神様も許してくれるだろう。

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