第141話 イってしまいそうになる


 それに、ガイウス陛下と親しいからといって、必ず貴族であるとは限らないではないか。


 もしかしたら豪商の平民である可能性だってあるはずだ。


 ほら、カイザル様も公爵家の別邸と…………あれ? 公爵家? 公爵家って確か……皇族の次に位の高い貴族だったような……。


 そんな……という事は、私は今までとんでもない人二人に物凄く失礼な態度を取り続けたという事では……?


「あっ、おいっ!?」


 そして私は、一気に血の気が引いて来たのか目の前が真っ暗になるのであった。



 ◆



「行ったか……」


 俺はカイザル様が聖女ヒルデガルドを連れて帝国へと消えていったのを確認してから呟く。


 そして俺は一気に顔を崩し、ニチャリと口元から音がする。


 流石にカイザル様の前でこの顔は見せられないからな……。


 聖女ヒルデガルドが世界一安全かつ、物理的に関しても遠く聖王国のハエ共が集る心配も無いだろう。


 という事は、聖女ヒルデガルドの事を考える事も、プレヴォの対処法を考える事も無く、後は俺の好きなように行動できるという訳である。


 そう思っただけで顔がにやけてしまうのは仕方のない事だろう。


 さぁ、どうやってプレヴォの奴を殺してやろうか……。


 ただ殺すのでは美しくは無いし、楽しい時間が直ぐに終わってしまうのでそれでは駄犬だ。


 あの肥大したプライドをへし折り、偉そうな態度や表情がどう歪んでいくのか想像するだけでもう、イってしまいそうになるが、ここでイってしまっては勿体ない為ぐっと堪える。


 やはりイク時はメインディッシュをいただく時が一番であり、その時の為に今まで準備をしてきたのに、それら努力がたかが妄想一つで霧散してしまう事など流石に勿体なさ過ぎるだろう。


 しかしながらやはりプレヴォという逸材をみてしまった以上妄想が止まらないのもまた事実である。


 あぁ、早くプレヴォの泣き叫び助けを請う表情を見てみたい。


 決行は本日の深夜、丑三つ時。


 以前の俺であればまず無理であったが、今の俺はカイザル様から貸していただいている装備品がある為簡単にプレヴォが住んでいる別邸に侵入でき、そしてこれまたカイザル様の貴重なアイテムを消費して覚えた結界魔術によって邪魔をされずに俺の気が済むまでプレヴォを痛めつける事ができるのである。


 そして俺はまた妄想の世界に旅立つのであった。



 ◆



「くそがっ!!」


 そう叫び、俺はテーブルに置かれたフォークを投げて壁に突き刺す。


 あそこでガイウスの野郎が来なければ今頃我は聖女ヒルデガルドの初めてを奪う事ができたというのに。

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