第139話 最悪の結果を引いてしまった


「ほ、本当に帝国から聖王国へとやって来たというのですかっ!? そもそも無色魔術というのも聞いたこともなければ【時空の扉】という魔術も聞いた事無いわっ!! 私を匿ってくれるというのは有り難いのだけれども、流石に今から帝国へと一瞬にして移動する何て事ができるとは到底思えないですっ!!」


 私は相手がガイウス陛下と、そのガイウス陛下と親しい間柄であるカイザル様であるという事も忘れて相手の言葉を否定してしまう。


 目上、それもガイウス陛下または同等の人物の言葉を否定するという事は不敬罪で殺されてもおかしくない事をしてしまった事に私は言った後に気付いてしまい私は一気に血の気が引いてしまう。


 終わった。


 こんな事で死ぬのであれば、まだプレヴォに犯されてでも生き続けた方がまだマシであったと言えよう。


 生きてさえいればまだこんな私にも質素ながらも幸せな生活を送れる未来だってあったかもしれないのである。


 それに生きてさえいれば私の気の持ちようで何とでもやりようはあったかもしれない。


 それを私は変に期待してしまったのか欲が出てしまって最悪の結果を引いてしまったようだ。


「お、おいっ、急に泣き出してどうしたんだよっ!? 俺かっ!? これ俺が悪いのかっ!? てか俺何かしたかっ!? この泣き方明らかに『私は助かるんだ』って安堵しての涙ではなくて『私はもう助からないんだ』という絶望からくる涙に見えるんだがっ!?」

「殺すときは苦しみたくないんでスパッと首を切り落として殺してください……。 図々しいかも知れませんが、これが私の最後の我が儘ですので聞いてくれるとありがたいです」

「いや、殺さないよっ!? なんでそうなるのかマジで謎なのだがっ!?」

「えっと、私がカイザル様やガイウス陛下の言葉を否定してしまった為、不敬罪として殺すのではないのですか?」

「は? いや、そんな事でいちいち殺す訳がないだろうっ!! というかそもそも無色魔術も【時空の扉】も君が知らないであろうことも疑惑を抱くことも何ら不思議ではないから君、というかヒルデガルドが俺の言葉を否定してしまうのも分かるからっ!! てか、そうだな。 もうこのまま一緒に帝国に行けばそれでヒルデガルドも信じてもらえるだろっ!」

「へっ!? きゃっ!?…………あれ? ここはどこなのですか? というか私は殺される事は無いのですか?」

「先ほども言ったがヒルデガルドを不敬罪だと殺すつもりも無いし、ここは帝国にある我がクヴィスト家の邸宅内にある俺の部屋だな」

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