第134話 勝てる筈が無い
「え? そのカイザル様というお方は今ここにいらっしゃるのでしょうか?」
流石に帝国にいるという事はないだろうし、ガイウス陛下の話し方からするに、まるで今すぐ相談できるような言い方をしていたようにおっしゃっていたのでほぼ間違いなくカイザル様というお方もここ聖王国に同行しているのであろう。
では、誰がカイザル様であるのか。
そう考えた時に一番怪しいのがガイウス陛下の側仕え兼護衛として部屋の隅にたたずんでいるあの男性が一番怪しいのではなかろうか?
そしてそう意識すれば意識するほど、確かにガイウス陛下の側仕え兼護衛のお方は普通ではないオーラを放っているような気がしてくる。
そもそも皇帝陛下ともあろうお方が『様』を付けていらっしゃるお方なのである。
普通の人である訳が無い。
「いや、カイザル様は今帝国の魔術学園に通っているのだが?」
「…………あ、そうですか」
とは思ったもののどうやら私の予想は見事に外れていたらしく、そして私の人を見る目も無いようである。
「しかしながら離れていても念話で会話できる魔術をカイザル様から教えてもらっているので今すぐに今起きている出来事を伝える事ができる、という訳である」
「あ、あのーー、その念話という魔術は誰でも覚える事ができるのでしょうか?」
「普通に覚える事は無理なのだが、カイザル様であれば誰でも覚えさせる事ができるとは言っておったの」
そしてガイウス陛下はさも何でもないようにおっしゃっているのだが、それがどれほど凄い事であるのか理解しているのであろうか?
それこそ帝国はこの先、他の国も帝国と同じように念話を使えるようになるまでは戦争で負け知らずであるという事である。
それだけ情報というものは戦況を優位に進める事ができる上に、それ故に情報が伝わる速度が早ければ早いほど戦況に直結するのである。
さらに言えば密偵を他国に送って得た情報を得るにはそれこそ行って帰って来るだけでも数日以上はかかる訳で、それが他国へ行くだけでその国の情報をいつでもどこでも自国に伝える事ができるという事でもあるのだ。
そんな相手に我々が戦争で勝てる筈が無いではないか……。
「……あぁ、別にこの国へ密偵を送ろうだとか、今のところは思っていないから安心したまえ」
そしてガイウス陛下は私の想像している事を察知したのか密偵を送るつもりは無いと言ってくるではないか。
もしかして私の思考を覗かれたのではなかろうかと思えるほどピンポイントな内容に、いったいどこまで皇帝陛下は私の考えを覗くことができるのであろうか? と思ってしまう。
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