第131話 あぁ、そういう事か


 そして聖王国に送り込んでいる草たちを使って、正義の鉄槌を下せる相手を炙り出し始めたのだが、それが思ったよりも早く見つかって我は早速聖王国へと向かう事にした。


 ちなみに聖王国側へは僧院の視察という事で、普段の僧院を見てみたい為できるだけ我が視察に来ることを隠してもらえないかと聖王国側へ申し込んでみると、聖王国側から何名か同行するのであればかまわないという返事を貰ったので、俺はほくそ笑む。


 聖王国側からすれば我が悪さをしないか見張っていればそれでいいくらいにしか思っていないであろう事が窺えているのだが、我が今から行うのは悪さでは無くて正義の行動であり、言い換えれば今まで聖王国側が無視してきた闇の一端を潰すために訪れるのだからありがたいと思って欲しいものである。


 そんなこんなで我の聖王国への訪問はとんとん拍子に進んでいき、今日こんにちにいたるという訳である。





「ふむ、アイツがプレヴォという男か……?」

「……は、はい。 確かに先ほどの男性がプレヴという男性であるのは間違いないのですが……それがどうしたのでしょうか?」


 皇帝陛下であるガイウス・ドゥ・ゴールド陛下はプレヴォが肩を怒らしながら去っていた扉を、まるで子供がショーウィンドウの中に入っているおもちゃを見つめるような視線で見ながらそう話すではないか。


 一瞬誰に話しているのか分からなかったのだが、今この部屋にはまるで空気にでもなったかのように気配を消しているガイウス陛下の側仕え兼護衛と私しかおらず、その『私は空気です』という態度の側仕えを見るにガイウス陛下はどう考えても私に話しかけているのだという事が窺える。


 まさか隣国とはいえ国のトップから話しかけられるような事が来るとは思っておらず、私は緊張で張り付いてしまった喉を強引にこじ開けて何とか返事を返す事ができた。


「ほうほうほうほうっ!! 実に可愛がりのある男性であったなっ!!」


 そして私の返事を聞いたガイウス陛下は『ニチャリ』と笑うと、そんな事を言うではないか。


 確かに、高貴なお方は男色の気がある者も多いとは聞くのだが、それにしてもプレヴォは流石に無いのではないか? と心の中で私はドン引きしてしまう。


 しかしながらそういう特殊なプレヴォを性の対象に見えてしまう審美眼を持っている珍しい人も、この世界中を探してみれば一人はいるかもしれないし、そしてそれがガイウス陛下という事であったという事なのだろう。


 あぁ、そういう事か。


 そして私は納得する。 帝国内ならその狂った審美眼が噂になってしまう可能性がある為わざわざ聖王国まで来て性の捌け口を探しに来たのだと。

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