第130話 怪しい者を炙り出すだけ
これの何が最高であるかというと『こちらには相手を一方的に痛めつけても良いと言う大義名分』があるところだ。
今までは『皇帝』という権力でもって暴力をふるっていたのだが、そこに正当性がなく、ただの暴力でしかなかったという事である。
しかし、この正義をもって悪を征すという暴力の使い方は、ただ俺のストレスを解消するという理由くらいしかなかった暴力に正当性を持たせてくれるのである。
この正当性という意味が暴力に加わっただけで、まるで我が神にでもなったかのような優越感と快感をもたらしてくれる。
想像しただけでこれなのである。
これから実際に暴力をふるうとなると、どれほどの優越感と快感を我にもたらしてくれるのだろうか。
あぁ、その日が楽しみで仕方がない。
そして、暴力を正当化できる方法がある事を知っていたカイザル様は、やはり我を導いてくれるお方で間違いないだろう。
しかもそれだけではなく『聖王国の僧院に寄付されている金額が一番大きいところの、その寄付の出所を辿ればとりあえずは悪党をいっぱい炙り出せるんじゃないか? そして寄付の金額に見合った活動実績がないのであればほぼ黒に近いだろうし、寄付している側は何かしらリターンがあるからこそ寄付していると思うぞ』と教えてくれる。
しかし、寄付された側が寄付金を不正に散財しているのならば想像がつくのだが、寄付した側は善意で寄付していると思うので流石に寄付した側も悪党であるとは考えにくいのだが? という旨をカイザル様に伝えてみたところ『それだけ資金と、それを寄付するほどの善意と行動力があれば自分で慈善事業団体を作り上げて炊き出しでも何でも恵まれない者たちの為に行動した方が安心して資金を使えるではないか』という返事がかえって来るではないか。
そのカイザル様の答えてくれた内容に我は、カイザル様の智謀に驚愕したものである。
自分で慈善事業団体を作って活動をせず大金だけをポンと寄付する。 確かに言われてみれば違和感しかない。
では何故寄付をするのかと、恥を承知の上で再度カイザル様に聞いてみると『僧院で過ごしているシスターや孤児たちを性的な目的で定期的に引き取っているのではないか? そしてそれが裏ビジネスにもなっているのではないか?』と教えてくれる。
なるほど、これならば多額の金額を寄付するメリットも分かるし慈善団体を作って活動しない理由も納得である。
そこまで分かれば流石にこれ以上カイザル様の手を煩わせるわけにいかない為我の権力と資金で動き、怪しい者を炙り出すだけである。
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