第125話 私をさらに嫌な気分にさせる
「聖女様ありがとうございますっっ!!」
「どういたしまして」
たったパン一つにクッキー二個。
ただそれだけで孤児たちはまるで誕生日のプレゼントを貰うかの如く満面の笑顔と感謝の言葉を私にくれる。
その笑顔と感謝の言葉を貰えるのであればパンとクッキーを配って良かったと思えるし、その分だけ勇気と元気を貰えるのだから、パンとクッキーを配った対価としては貰い過ぎなくらいである。
「聖女様、遊ぼーーっ!!」
「聖女様かくれんぼしよーーっ!!」
そして子供たちは私が配ったパンとクッキーをペロリと平らげると、いつものように遊びに誘ってくれる。
そんな子供たちを接しているだけでここ最近の嫌な出来事による鬱屈した気分を考える脳内のスペースが無くなり、かなりリフレッシュできた一日であったと言えよう。
子供たちは天使という者がたまにいるのだが、私も子供たちは正に天使であると思う。
むしろ天使でなければこれほどまでに幸せな気持ちにしてくれる理由が思い当たらないからである。
「おかえりなさいませ、聖女様」
「ただいま戻りました」
そして心も身体もリフレッシュした私を側仕えの修道女であるララが出迎えてくれる。
同じ修道院の者同士である為私の事も名前であるヒルデガルドと呼んで欲しいと側仕えの子が変わるたびにお願いしているのだが、未だに私の事をヒルデガルドと名前で呼んでくれる者がおらず、少しだけ寂しく感じてしまう。
「聖女様、本日もあの方が聖女様とお会いしたいといらしておりますので客間で待っております」
「……分かりました。 準備が終わり次第そちらに向かいましょう。 その旨、一応伝えといてください」
「分かりました」
そしてララが私の指示を聞き、遂行する為に部屋から出ていくのを確認すると、私はだらしなく備え付けのソファーにもたれかかる。
私は聖女と呼ばれているのだが、それは他人が勝手に呼び出したというだけで私自身は普通の人間である。
普通に疲れるし、誰も見ないところではだらしない格好でソファーにもたれかかるし、嫌いな人間や苦手な人間も当然存在する。
そして今ララが『私に会いに来た』と告げてくれた相手こそが、私が今一番会いたくない相手であり、嫌いで苦手な人物、プレヴォ・ド・ドゥアーブルである。
しかしながら彼が何か聖王国の法に触れているような行為を表立ってしている訳ではないので訪問されても突き返すことが出来ない。
それに、彼が修道院に多額の寄付をしてくれたおかげで孤児院の子供たちへ食べ物を寄付する事ができるのもまた事実であり、その事が私をさらに嫌な気分にさせる。
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