第124話 悲しくもある


 なんでこのお父様はいつからこんな常識人のような事をいきなり言い始めたのか。


 どうせカイザルの奴に何かされたのであろう。 それこそ私やあの場にいた貴族たちのように契約を結ばされているとか、隷属されている故に常識的な思考で動けと命令されている可能性だってある。


 だとしても今までが暴君のように振舞っていたお父様が急に常識人ぶったところで『お前が言うな』と思ってしまい、余計に腹が立ってくる。


「うるさいっ!! なんでお父様に真っ当な事を言われなければならないのよっ!! お父様こそ頭を冷やしてよくよく考えれば良いのではなくてっ!?」


 そして私はお父様の呼び止める声を無視して自分の部屋へと向かうのであった。





 聖女。


 私は人々からそう呼ばれている。


 私はただ、目の前で困っている者たちに今できる事をしてきただけなのだが、私が当たり前であると思っていたこの行動が、どうやら人々からすれば聖女に見えているという事らしい。


 私からすれば当たり前の事をやっているだけなので聖女と呼ばれると少しだけむず痒く感じてしまう。


「あ、聖女様だっ!!」

「ホントだっ!! 聖女様おはようございますっ!!」

「聖女様っ!!  今日もお美しいですねっ!!」


 そんな事を思いながら私はいつも行っている、聖王国王都にある孤児院のへと着くと、子供たちが私を見つけるや否や『聖女様』と駆け寄ってくれるではないか。


「はい、皆さまおはようございます。 良い子にしてましたか? シスターを困らせるような事はしてないですよね?」


 そんな子供たちに挨拶を返し、私が来るまで良い子にしていたか確認を取ってみると、皆元気よく『良い子にしていた』という返事が返ってくる。


 うん、みんな元気そうで何よりだ。


「では、今日もパンとクッキーを持って来たからみんな喧嘩をしないように取り分けて食べてね」

「「「はーーーーいっ!!」」」


 そしてみんな食欲旺盛である。


 朝ごはんは既に食べているであろうに、勢いよくパンとクッキーを私の手から受け取るや否や物凄い勢いで食べ始める。


 まさに食べ盛りという言葉がしっくりくる光景である。


 ただでさえ平民の中には食べ物をまともに食べれない子供たちがいるなか、孤児たちともなると碌に食べれない時もある為定期的にこうして食べ物の寄付をしているのだが、寄付したものを美味しそうに食べる子供たちを見て良かったと思うと共に、この子たちはお腹がいっぱいになるまで食べ物を食べれないのだという事実に胸が締め付けられるほど悲しくもある。


 

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