第三章 聖王国編

第121話 私の嫌な予感




 お父様がカイザルによってボコボコにされた結果、カイザルの奴隷へと墜とされた上に今まで見たいに恐怖で家臣を従えることも無く、無理な税を帝国民に押し付けるような事も無くなった。


 そして私はダグラスとオリヴィアに続いてお父様までカイザルによって奪われたのである。


「おぉ、良いところに居た。 リリアナよっ!!」


 こんな時に限ってお父様に見つかり声をかけられるのだが、だからこそ物凄く嫌な予感がする。


「……な、なんでしょうか? お父様」

「そう警戒するような事でもない。 お前にとっても良い事だ」


 その良い事がとてつもなく嫌な予感がするのだと言いたいのだけれども、ここでそれを言ったところでお父様が止まるわけもないので口から出そうになるのをグッと堪えて聞き役に徹する。


 もし私の嫌な予感が当たった場合はその時に反論すれば良いだろう。


「良い事って何よ……。 私からすればここ最近嫌な事がたて続けに起きているのだけれども? どっかの誰かさんのせいで」

「そうは言うでない。 あれは今思えばこそ俺が悪かったのだからな。 自分の事を天才であると勘違いして多方面に迷惑をかけまくっていると気付かせてくれただけでもありがたいというのに、それだけではなくカイザル様は俺の命を取らないばかりか隷属してくださり、今もなお禊を与えてくださっているのだぞっ!? むしろ今までが最悪で以降は光り輝いていると言えよう。」


 それがわたしからすれば最悪な出来事だというのに、むしろ今までが輝いていて、カイザルが暴れ始めてからが闇である。


「そんな事はどうだっていいわ。 それで、お父様は私に用があって話しかけてきたのではないかしら? 何も用がないのであれば私はこの場を離れたいのだけれども? 一応私もやるべきことはあるので暇ではありませんので」

「おう、すまんすまん」


 本当にすまないと思っているのであれば私の視界から消えて欲しいし、声もかけないで欲しい。


 所詮ダグラスもオリヴィアもお父様も私からすればカイザルに負けた上に、カイザルに良いように使われているゴミでしかない。


 そしてそんなゴミ風情が私に話しかけてくるというだけでも腹立たしい。


 そもそもお父様に関しては皇族の面汚しでもあるので尚の事腹が立って仕方がない。


「それでリリアナを止めたのは他でもない、カイザル様との婚約の件だ」

「…………はぁっ!? 婚約っ!? 私とカイザルがっ!? 私とカイザルの婚約は破棄されたのではないですかっ!?」


 あまりにも予想の斜め上の事をお父様が言ってきた為私は思わず聞き返してしまう。

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