第118話 今この時より平民な


 どうせこいつも結局のところは金や権力が欲しいだけなのだろう。


 確かにこいつの態度に関しては腹が立つし、普通であれば拷問の上に処刑するのが普通であるのだが、逆に俺が揃えた精鋭たちをここまで簡単に無力化できるのだとすれば逆に殺さずに利用した方が良いだろう。


 それこそ、こいつをおだてて調子づかせたところで憎き聖王国にでも単身攻めさせればそれだけでこいつによって苛立った感情を差し引いてでもお釣りがくる程の利益を生んでくれるであろうし、それこそそのまま野垂れ死んでくれれば俺からすれば嫌いな奴が俺に利益をもたらした上で死んでくれたことになる為まさに良いこと尽くめではないか。


「さぁ、お前が欲しいものを俺に言ってくれ。 女でも地位でも名誉でも大金でも何でもいい。 言ってくれた事であれば何でもお前に差し上げようではないか。 その代わりといっては何だが俺の盾又は剣として働いてもらうのだが、お前にとってもメリットしかない話だとおもうぞ? それこそお前の実家であるクヴィスト家よりも上の存在である新しい家名と爵位を与えても良い。 爵位に関してはクヴィスト家と同等の公爵家となってはしまうのだが、皇帝である俺がお前の得た爵位こそが一番上であると正式に発表してもいいぞ? どうだ?」

「は? ここまで来て命乞いとかダサすぎるだろお前? あと、そんなもの、今ここで俺がお前を殺せば全て手に入る上にお前の下に付く必要もねぇだろ? 違うか?」

「うぐっ……ち、違うっ!! 違うぞっ!! そ、そうだっ! お前には帝国という国をどうやって運営していくか分からないだろう? その点俺は今まで帝国を運営してきた実績もあるし、そういった面倒事は俺がいればやらずに済むではないかっ!!」


 こいつ、バカの癖に無駄に変な所に気付きやがる。


 しかもこの感じは、ここで俺の存在意義を示さなければ間違いなくここで殺されてしまうではないか。

 

 こんなゴミ虫にこの俺が殺されるなどあってはならない。


「いや、お前のせいで帝国はボロボロだろうが。 何ふざけた事言ってんの? お前実際に帝国にある町々を、せめて城下町くらいは見て周った事あるか? お前の政策がゴミ過ぎて住んでいる人々の目が霞んでるぞ?」

「は? 帝国に住まう平民などどうでも良いであろうブフォワァッ!?」

「なんでも俺のして欲しい事を聞いてくれるんだよな? だったらお前今この時より平民な。 帝国は俺が責任をもって運営していくから心配する必要はないからな」


 そしてゴミムシはこの俺の右頬を殴ったかと思うとそんなふざけた事を言うではないか。

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