第117話 その点だけは評価できる


 そう思いながらユーグとカイザルが戦っているであろう方向へ目を向けると、帝国騎士団長であるユーグがカイザルによって連続攻撃を喰らい、最終的には吹き飛ばされるところであった。


 腐っても帝国騎士団長、しかもカイザルの強さは剣を交えた事によって分かっているであろうから手を抜く事などあり得ない。


 その為カイザルは足払いでユーグを転倒させた時にとどめを刺さなかった時点で、次からはそのようなビギナーズラックなどあり得ない為、カイザルに勝ち目はないであろうと思っていたが故に俺は一瞬だけ呆けてしまう。


 というか、あの流れるような連続攻撃は何だ?


 そもそもあれほどの連続攻撃を繋げる事ができるという事は、カイザルは予め攻撃の繋げ方を知っているという事でもあり、それはカイザルが素人ではなく、帝国騎士団長を圧倒するほどの実力を持っているであろう事が窺えて来る。


「な、何をしているお前たちっ!! 早くこの無礼者を捕縛せぬかっ!! なんのためにお前たちを雇っていると思っているんだっ!! もしカイザルと取り逃がすような事があればここにいる全員首を切るからなっ!!」

「無駄だよ? ガイウス・ドゥ・ゴールド皇帝陛下(笑)。 何故ならば面倒くさくなったから次の魔術で全員を無効化させてもらうからな。 それと、なんで俺が逃げる前提何だ? 違うだろう? せっかく帝城に乗り込み、皇帝陛下(笑)の目の前に来たのに、皇帝陛下(笑)が用意した用心棒たちが強いというのであれば分かるのだが、クッソ程弱いにも関わらず敵前逃亡するわけが無いだろう? どこまでお前はバカなんだ? これでよく今まで帝国を破綻させずにやって来れたな。 まぁどうせ帝国の経営などは部下などに丸投げ何だろうが、皇帝陛下(笑)が政をやるよりもそこら辺の使用人をとっ捕まえて任せた方がどう考えても良いに決まっているから、無意識にそうしたにせよその点だけは評価できるな」


 そしてカイザルはそう言うと、無詠唱で何らかの魔術を行使したのであろう。


 次の瞬間には周囲にいた、俺が招集させた帝国の中でも上位ランクの冒険者や宮廷魔術師、帝国騎士団の団員たちが一斉に眠り始めるではないか。


 一体どのような魔術を行使すればそのような事ができるのか、またそれほどの魔術をどうすれば無詠唱で行使できるというのか。


 ただ分かる事は今この場で動ける者は俺とシシル、そしてカイザルだけであるという事である。


「ま、待てっ! そ、そうだっ!! お前が欲しい物ならば何でもやろうっ!! だからその手に持っている剣を鞘に納めてはくれないかっ!?」

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