第116話 看過できるような内容ではない



「………………はい」


 あれ? 俺の耳が聞き間違えたのだろうか? 俺に向かってキモイだのバカだの言っている風に聞こえたんだが?


 いや、きっと俺の聞き間違いでありキモイだのバカだのはカイザルの事に違いない。


「とりあえずあなたみたいなゴミムシに助けを求める程私は落ちぶれていないし、そもそも隷属は私がカイザル様の奴隷になりたいから成っているだけで、自分の意志でカイザル様の奴隷を選んでいるのに、勝手に自分の『そうであってほしい』という理想を強引にねじ込んだ妄想をその息がドブの臭いがする口から吐き出さないでくれるかしら? 私の耳が腐ってしまうわ」

「シ、シシルよ……いくら何でもいって良い事と悪い事があるだろう。 カイザルを捕縛して殺し終わったあと、いくら洗脳されていたと言ってもシシルに対いて厳しい対応をしなくてはならなくなるぞ?」


 流石にこの物言いはいくらシシルが洗脳されていたとしても看過できるような内容ではないだろう。


 この皇帝である俺に対して、このような侮辱めいた言動を一切咎めないとなると、それを見た下の者までもが俺に対して舐めた態度を取り始めてしまいかねないので引き締めるところはしっかいと引き締めていかなければならないのである。


「は? これからご主人様によって裁かれるゴミムシに対して、なんで気の利いた言葉を考えなければならないのかしら? そんなんだからあなたはバカなのよ。 いくら権力を持っていようとも圧倒的な暴力の前ではそんな権力など無意味であると何故分からないのかしら? あ、バカだからでしたわね。 例えるのならばいくらお金や金銀財宝を持っていても、無人島に一人取り残された場合はそれら全てガラクタに変わってしまうのと同じよ。 そして今この状況まさに、ゴミムシの言う権力は私のご主人様の圧倒的な暴力まえではガラクタに過ぎず、さらにゴミムシ程度の知能ではご主人様の圧倒的な智謀によって小細工など通用しないわ」

「貴様こそ何おかしな事を言っているのだ? いくらカイザルが強いと言ってもここに集めている者たちは帝国の精鋭揃いなんだぞ? そんな奴らが集まっているのにカイザル一人で何ができるというのだ? 確かにユーグとの戦闘をみた感じ少しばかりやれそうな実力である事は認めるのだが、カイザルが人間に化けているドラゴンでもないかぎり所詮はそこ止まりであ…………はい?」


 シシルの言いたいことは分かるのだが、それを成しえる可能性はそれこそエンシェントドラゴンなどが帝国に襲って来たなどという場合しかあり得ないのである。

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