第115話 悪の手から救い出す正義の行為


「シシル、お前……先程シシルがカイザルの奴隷という言葉を聞いたような気がするのだが……」


 気のせいであって欲しい。 何かの間違いであって欲しい。


 あの、絶世の美女に豊満なボディーを持っているシシルがカイザルの奴隷だと思いたくも無いし信じたくない。


 もしシシルがカイザルの奴隷という事であれば間違いなくカイザルはシシルを毎晩抱いているのであろう。


 俺ですら未だに抱けていないシシルをである。


 そして俺が、もしシシルを抱けたとしてもカイザルの後に抱いたという事実は無くならないわけである。


 そんな事が許されていい筈が無い。


「あら? 気になるのはそこなのね。 でも隠す様な事でもなければむしろ周囲の人達に自慢したいと思う程だから特別に皇帝陛下(笑)には見せてあげるわ」


 シシルはそう言うと着ている服のボタンを外し始め、胸元を露わにするではないか。


 そしてそこには確かに、魔力によって刻まれた隷属印が浮き上がっているではないか。


「グギギギッ!!」


 その光景にブチキレそうになったのだが、ここでキレてはいけない。


 もしかしたらシシルは無理矢理カイザルの糞野郎に隷属させられている可能性だってあるのだ。


 そもそも俺の誘いに一切靡かなかったあのシシルの事を考えれば、むしろそうとしか考えられない。


 当然カイザルのお古というのは気にかかるのだが、カイザルをこの後殺した上でシシルの記憶を弄ってカイザルの事はもちろん、そういう行為に関する記憶を全て奪い去ってしまえば良いだろう。


 そう、これはシシルを悪の手から救い出す正義の行為なのである。


「………………ふーーっ、なぁシシルよ。 今は苦しいかも知れないが、今すぐこの俺がシシルの事を救い出してやるからな。 そしてシシルの記憶の中の思い出したくもないものも全て俺が消し去り、そして俺との美しい記憶で塗り替えてやろう。 だから俺に一言『私をカイザルから解放して』と『助けて』と言ってくれはしないか? そうすれば俺は何処までだって頑張る事ができる……っ!」


 なので俺は怒りの感情を何とか沈めて、シシルの目を見て話す。


 シシルよ、お前が俺の助けを必要なのは分かっている。 あとはその口から思いの丈を吐き出すだけである。


「は? 何コイツ。 キモイキモイとは思っていたのだけれどもまさかここまでキモイ存在だったなんて……。 後『私をカイザルから解放して』と『助けて』で二言じゃないのかしら? バカだバカだとは思っていたのだけれどもここまで救いようの無いバカだったなんてね……」



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