第110話 頭はバカなのだろう
◆
「いつになったらアイツは来るのだっ!?」
アイツの手紙が正しければ今日アイツは俺の元まで自ら来ることになっている筈である。
であるにも関わらず現在は太陽が傾き始め、夕刻になろうとしているではないか。
普通は早朝にやって来るものではなかろうか?
それだけアイツは皇帝である俺の事を舐め腐っているという事なのだろう。
そんなアイツの『どうせ遅れて行っても良いだろう』という考えが透けて見えてしまう分余計に腹が立って仕方がない。
そして更に腹が立つのは俺が、アイツがいつ来るのかを聞いているにも関わらず誰もそれについて答えないという事である。
「何故誰も答えない? ここにいる全員殺されたいのか?」
「それは皇帝陛下が数時間前に返事をした者を殺して来たのが原因かと思われます」
「あ? ユーグ・ド・イヤン。 お前は俺に指図するのか? 『分からない』などとほざく奴が悪いのであろう? 分からないのであれば何故口を開く必要がある? 俺の問いに答えるという事はいつ来るか知っていると思うのが普通であろうが」
まったく、こいつは帝国騎士団長というだけあって無駄に実力があるせいで偉くなったと勘違いしているのか俺に指図するとは……。
直ぐにでもコイツの首を切り落としたいのだが、そうするとカイザルを捕縛する為の戦力が減ってしまう為俺はぐっと我慢する。
今まで馬鹿共がカイザルを捕縛するのに失敗してしまったのは結局のところカイザルを見下して中途半端な形で捕縛しに行ったからに過ぎない。
見下すのは良いのだが、手を抜く時点でそいつの頭はバカなのだろう。
そしてこの国で唯一まともな判断ができる俺は今日の為にかなりの実力者を集めてここへ招集しているのである。
いくらカイザルの裏が想像以上に強かろうが、流石に今日ここに集めたメンバーよりも強いという事は無いだろう。
そのメンバーの要になっているのがこのユーグ・ド・イヤンである為、殺すに殺せないのが俺を腹立たせる。
カイザルといい使えない部下といいコイツといい、どれだけ俺を腹立たせれば気が済むのだ。
とりあえずカイザルの件が終わり次第、次はコイツを拷問した後に殺す事は決定である。
バカの癖にこの俺に対して異を唱えた時点で大罪であるのだから、カイザルの件が終わるまでとはいえそれまで生きながらえる事ができるのだから感謝してほしいほどである。
「しかし、知らないというのも大切な情報ではないのでしょうか? それで殺すのは如何なものかと思います。 この者にも家族はいたでしょうに……」
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