第108話 俺は頭痛がしてくる
「で、ですがギリギリで行っても焦るだけでいい事など何もありませんよっ!! やはり敵の本拠地へ乗り込むのならば一日でも早く目的地へと向かい、事前に下調べをするべきだわっ」
「まぁ、普通ならばそうするのが一番良いんだろうね。 何なら先に偵察部隊を送れば尚良しといった感じか? なんせ自分の命がかかっている上に相手は帝国の事実上トップである皇帝陛下であるのならば猶更だな。 自分の生存確率を上げる為にもシシルの言いたい事は分かるのだが、それはあくまでも一般的な考え方であり、実はもう既に俺の使役しできる召喚獣の中でも隠密行動に長ける魔獣を偵察させに行かせているんだな、これが。 それこそ帝城の入り口から皇帝陛下がいる場所まで迷わずに迎えるぐらいの簡単にできる程の情報は既に俺に魔獣から送られてきている。 だから心配してくれるのは有難いのだけれども、とりあえず大丈夫だからこの件に関してはスルーして欲しい。 それに、事前に偵察などしなくても真正面から出向き帝国を乗っ取る事くらいは簡単にできるくらいの能力は持っているからそこまで神経質になる理由もないだろう」
この変態駄エルフが俺を本心から心配してくれているのは奴隷の懐き度が何故か既にマックスまで振り切っている事からも分かるので鬱陶しいと怒る事も出来ずに、取り敢えず心配する必要がない理由を噛み砕いて教えてやるのだが、それでもシシルはどこか不満げである。
「違いますご主人様っ!! ご主人様の強さの持ち主であれば負ける事などまずあり得ない事くらいは理解できているわ。 しかしながら私は思うの……これほどまでに完璧な私のご主人様を帝国に住む国民に知れ渡させるにはどうすれば良いのかと。 それには事前に告知していく活動が必要であるとっ」
「…………はい?」
「事前に告知して城下町に住む者達にある程度ご主人様の噂が広まった所で巨悪の皇帝ガイウス・ドゥ・ゴールドを討てばご主人様の偉大さを知らしめる事ができるというものだわっ!! しかしながらいきなり襲撃して一瞬にして終わらせてしまっては余りにも勿体ないわっ!!」
「………………ご、ごめん。 ちょっと余りにも俺の想像とかけ離れ過ぎていたから脳内の処理が追いつけていない……」
そして俺の説明を聞いたシシルは、それが間違いである事をまるで群衆に演説するかのノリで俺に自身の考えを説明し始めるではないか。
その内容を聞いて俺は頭痛がしてくる。
誰かこの駄エルフの思考回路を正常に修理できる者はいないものか……。
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