第107話 ほんの少しだけ思う
なんでこの馬鹿どもはそんな事も分からないのか。
こんなんでは首を切られても致し方ないであろう。
「良いか? 失敗したのならば成功するまで何度でもカイザルを捕縛しに行けば良いだろう? そうすれば失敗したことにもならなければ俺にこうして首を切られる事も無かったろうに。 本当に俺以外はバカばかりだから困る。 その上こうして実際に目の前で罰を与えてやるところを見せないとお前たちは理解できないときた。 俺一人が天才であるというのも考え物だな。 これでは俺が死ぬまでに城の中の者を全て殺しつくすんじゃないのか?」
そして俺がこのしんみりとした場を和やかにしようと最後は軽いジョークで笑いを誘うのだが、笑う者は一人もいないではないか。
確かに笑いは難しいとも言うし頭が良くないと高度な笑いはバカにはすこし難しすぎたのかもしれない。
「おい、どうした? 最後のはギャグだぞ? 笑わないのか?」
なので優しい俺はちゃんとギャグである事を伝えてやると、周りの者たちはようやっと先ほどの俺のギャグに気付いたのか笑い声が聞こえ始める。
「いやぁ、確かに今思い返せば実に面白いギャグでしたなっ!!」
「皇帝陛下は頭の回転が物凄く早いので我々では気づけないようなクオリティーでギャグを思いつくのですねっ!!」
それとともに徐々に笑い声は大きくなってきて、称賛するものまで出て来る。
やはり俺一人だけ天才というのはそれはそれで寂しいものだな、と俺は改めて思う。
そんなこんなでこの数時間後、俺はカイザルの手紙が読めるようになったので読んでみると、明日ここにカイザル自ら訪れると書いているではないか。
こんな事であれば別にあいつを殺す必要も無かったな、とほんの少しだけ思うのであった。
◆
「ご主人様、本当に今から間に合うのでしょうか?」
シシルがそう俺に行ってくるのだが、昨日からずっと言ってくるので流石にいい加減鬱陶しくなって来るので命令をして黙らしてやろうかと、思うもののこれが実はシシルの罠(俺に命令させるように仕向ける罠)である可能性も高いため俺はグッと堪えて我慢をする。
そもそも命令自体前世の価値観も相まってしたくないのだが、この鬱陶しさはまるで今から勉強をしようとしていた時に限って母親から『遊んでないで勉強をしなさいっ!』と言われるくらいの鬱陶しさに近いものを感じるのである。
それが昨日の晩からずっとなので俺の苛立ちも限界に来ている。
「いや、だから何度も言っているんだけど? 余裕で間に合うって」
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