第106話 俺という唯一の存在
なんだこいつは? 俺に緊急の報告があるからと発言を許可したにも関わらず、こいつの口から出た言葉は俺の機嫌を著しく損ねる内容ではないか。
「そうか…………。 今回も失敗したと」
「はい。 そしてこちらが氷漬けにされた帝国の刺客たちです。 そ、それとカイザルから手紙を預かっておりまして……、どうやらこの手紙は皇帝陛下が手にしてから数時間経たないと読めない仕組みになっているようですっ!!」
「そんな事を聞いているんじゃないんだよっ。 なんで負けた事を俺に報告してきているのか問うているのだが?」
「ひ、ひぃっ!? お、お許しをっ!!」
「は? なんで俺に不快な思いをさせたお前を許さないといけないんだ?」
そして俺は涙と鼻水を垂らしながら懇願する目の前の使えない男性の首を切り落とす。
その瞬間部屋の空気は静まり、ここにいる者が絶句しているのが伝わってくるのだがそんな事など関係ない。
この国では俺が一番偉いのだから、この国で生きる男性一人の命をどうしようが俺の勝手であろう。
「なんだお前たち? 何か文句があるならば申してみよ」
「い、いえっ!! 何もございませんっ!! この者の首を切り落としたガイウス・ドゥ・ゴールド皇帝陛下様の判断は正しいと私も思いますっ!!」
「お前は?」
「わ、私も正しいと思いますっ!!」
そして俺はここにいる者約十名もの側仕えや護衛たちに俺と先ほど首を切り落としたもの、どちらが悪いのか聞いて周る。
全員聞き終えたのだが、結局皆口を揃えて首を切り落とされたこいつが悪いと言い、俺の事は絶賛するではないか。
恐らく、全員が俺の行動に賛同していない事は先ほど俺がこいつの首を切り落とした時の空気でなんとなく伝わって来ているのだが、俺はそれを覆せるだけの力を持っているのである。
俺が白と言えばカラスも白となる。
それが皇帝である俺という唯一の存在なのだ。
「おい、お前。 こいつを片付けておけっ」
「は、はい……っ!」
「床の血もちゃんと拭き取っておけよ?」
「は、ははは、はいっ!!」
そして俺はここにいる中で一番弱そうな奴を選ぶと、床に転がっている死体と、汚れた床の掃除を命令する。
「いいかお前ら? 俺は『カイザルを生きた状態でここまで連れてこい』と言ったのだから、ここへ報告するときはカイザルを連れて来た報告しか受け付けない。 どうせ失敗したと知ったところでもう一度カイザルを捕縛しろと命令するのだから二度手間になるではないか」
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