第102話 確認しなければ生きている
そして拘束されている内の一人がトイレについて聞いてくる。
そのあたり女性故に気付けたのであろうが、この立場でトイレ事情を気にできるほどの余裕があるあたり何だか気に食わないので敢えてはぐらかしておくことにする。
「さぁ、どうなるんだろうな? 想像すれば分かるんじゃないのか? それくらい。 あ、一応水分補給だけはたっぷりとさせてやるよ。 特にトイレ事情に関して一番早く気付けたお前にはな。 それこそ利尿作用があるコーヒーあたり良いんじゃないか? シシル」
「お呼びかしら? 我が愛しのご主人様っ!?」
「………………………………死なない程度にこいつらに水分補給をしてやってくれ。 あと、この女には特別にコーヒーを飲みたいだけ飲ませてやってくれないだろうか?」
「わかったわ。 でも、私ちょっと嫉妬してしまうんだけれども?」
とりあえずシシルを呼び出すと、普通にコイツ影から出て来たんだけど、確か屋敷の中に残してきたような気がするんだが、もしかして初めからずっと俺の声を聴いていたっていうことは無いよな? その場合ますます俺のプライベートな時間が無いに等しい事になって来るんだが……? ジャミングとか、リンク切断とかできれば良いんだが。
いやもうこの考えは良そう。 俺は何も気づかなかった、それでいいではないか。
それにもし見られているのだとしたら、止めるように命令をしたところでぶっちゃけ今更であろう。
うん。 おれは何も気づかなかったし、何も知らないまま。 おれは何も気づかなかったし、何も知らないまま。 おれは何も気づかなかったし、何も知らないまま。
どんなに真相を知りたかろうが開けてはならぬパンドラの箱と言うのは必ず存在するのである。
シュレディンガーの猫であっても確認しなければ生きている猫が存在し続けるのと同じ原理である。
この件に関しては聞かなければシシルが盗聴していない世界線もあり続ける、そういう事である。
そして俺は自分自身に自己暗示をかけ、現実逃避をしたあとシシルに今回【拘束】で捕まえている者たちの管理をしてくれないかとお願いをしてみる。
するとシシルは快く承諾してくれるのだが、どこか納得いかないような表情をした後拘束されている奴らを見て『嫉妬してしまう』と言うではないか。
そんなシシルの発言は無視すれば良いものを、俺は嫌な予感がしているにも関わらず思わず聞いてしまう。
人間、見たくない事に関しては何故か興味を持ってしまう時がある。
そして先ほどその興味を自己暗示で無理やりなかった事にした反動で俺はその欲求が強く出てしまってしまい危機管理能力が疎かになってしまっていたようである。
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