第98話 嘘であろうと何だって良い


「ちょっとっ!? 何で私が出れないのよっ!?」


 そしてシャルロットは何故自分で張った結界から出る事ができなくなっているのか気付いていないのか、みっともなく叫びながら結界をどんどんと叩く。


「ようやっと気付いたか。 てか流石に自分が不利な状況にならないと気付けないとかヤバすぎでしょ?」

「や、やっぱりあなたの仕業ねっ! 一体何をしたのよっ!! てか元に戻しなさいっ!!」

「何を言っているんだ? オバサンが俺を逃げれなくしたように俺もオバサンが張った結界を利用させてもらってオバサンもこの結界から逃げれないようにしただけに決まっているだろう?」


 まぁ、俺を見下している間は気付けないとは思っていたのだが、しかしながらこれで皇帝陛下が差し向けて来る程の実力者であるというのだから残念としか言いようがない。


「だ、だけれども私には他に──」

「あ、ちなみにオバサンの貼った結界の効果だけだと心もとないから外からの干渉は一切できないようにしているから頑張って連れて来た部下か傭兵か冒険者かは分からないけど、外側からこの結界を解術する事はできないからな?」

「そ、そんな出鱈目な結界がある筈が無いわ……っ」

「まぁ事実だから別に信じて貰わなくても良いし、どうせオバサンがここから出れないというのは本当だし、オバサンを殴れるのであれば真実であろうと嘘であろうと何だって良いよ」


 そして俺は説明するのも面倒くさくなったのでそのままシャルロットへと歩き、近づいていくのだが、歩くたびに【コキュートス】によって凍ってしまった芝はザクザクと音を立てて崩れ、俺の足跡を作っていく。


 因みに【コキュートス】が作り出した氷(魔術を発動した地点から円形に氷が広がっていく。 その様は正に大河の最初の一滴である湧き水が湧くかの如き光景である)は、実際に魔術を行使した俺、又は味方には牙を向かない。


 しかしながら敵に対しては一度触れたものは氷が牙を向き、三十秒程かけて氷、もしくは白い煙に触れた物の全身を凍らしてしまう。


 そしてこの白い霧の先端は速度こそ遅いものの敵に向かって伸びるのに加えて幅も大きくなって行くだけではなく、その白い霧の真下は凍って行く。


 この『魔術を発動した地点から氷が広がっていく』『白い煙のような霧は根元部分から幅を広げながら敵に向かって伸び続ける』という効果が非常に強く、見た目だけは他の段位八の魔術と比べるとかなり地味なのだが、早急に対処しなと相手は動けるスペースが少なくなってくるのである。

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