第96話 某髪型が鳥の巣先輩の意思


 そう、いくらこちらが有利に展開を進めているとしても、シャルロットは俺を捕縛する為に数十人もの人数を集めてきているのである。


 そして、だからこそこの状況でもまだシャルロットは『俺に勝てる』とでも思っているのであり、どう逃げるかよりもどう勝つかと考えているのであろう。


 しかしながら俺は逆にどのような事が起きれば負けるのかというのを想定いく。


 そしてこの世界の住人、その中でも冒険者ランクSと言われる者達が揃っていたとしても負ける要素は無いと判断する。


 もしそれ以上の者、それこそ俺と同格の者が潜んでいたのだとすれば俺は素直に逃げるだけである。


 チート級の力を得ているからこそより一層不測の事態を想定する、逃げる事も視野に入れて行動する、それを改めて反面教師で教えてくれたシャルロットには感謝である。


「どんなトリックを使ったのかは分からないけれども、そんな大技そう何度も使えるわけがないわよね? それこそ普通に魔術を詠唱してから行使した方が魔力消費量は少ないにも関わらずわざわざ無詠唱で、それも段位三の魔術を四回連続で唱えるなど余りにも不自然。 確かに段位三レベルの魔術を無詠唱で行使するのは偉業とも呼べる御業なのだろうけれど、わざわざ今無詠唱で行使する必要は無い。 それは、あなたが私に勝てないと分かっているからハッタリをかまして私を諦めさせようとしている証拠よ」

「………………はい?」


 デジャブだろうか? 少し前に同じような内容をドヤ顔で説明するではないか。


 コイツの頭は鳥頭なのだろうか? ここまでくると流石に笑えないんだが。


「いや、もう良いよ。 オバサンに付き合うだけ時間の無駄だ。 もう殴って終わりにしようや」

「その威勢のいい態度がいつ崩れるのか楽しみだわっ!!」

「とりあえずオバサンにも分かるようにしっかりと詠唱して魔術を行使してあげようか。 確かオバサンは氷魔術が得意みたいだから氷魔術を行使すれば流石に分かるっしょ?」


 そして俺はいい加減飽きて来たのでオバサンを殴る事にする。


 オバサンだろうがオジサンだろうが女子供だろうが俺の命を奪いに来た時点でやり返されても文句は言わせない。


 某髪型が鳥の巣先輩の意思、ここ異世界にて引き継ごうではないか。


 とは言っても普通に魔術を使用する魔力を消費して行使する魔術の段位と魔術名を言うだけなので数秒で済むのだが。 そもそもこの世界は良く分からない氷の精霊がどうとか極寒のとか、全てを貫き、とかいちいち言わないと魔術を行使できない意味が俺には分からない。

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