第94話 正にやりたい放題



 しかしながら何故かこの世界ではこの【魔術消滅】という魔術が無く、確かに初めて行使されたら何が起きたか分からなくなるシャルロットの気持ちも分かる。


 俺もゲーム時代初めて使われた時は本当に何をされたのか分からなかったくらいだからな。


 因みに大会では同じ魔術は四回までであり、また使用できる魔術の種類はテイムした魔獣やスキルを合わせて全種類回数合わせて四十回使用可能である。


 その為一種類一回で登録し、その代わり四十種類もの魔術やスキル、魔獣を駆使して戦うハイランダー、低コスト魔獣を中心にして一気に攻めて戦うスタンピードや重い魔獣を横に並べて戦うビートダウン、相手の魔力を枯渇させる能力を持つものを中心に組んで戦うマナデス、相手の魔術などを妨害するパーミッションに、相手の動きや戦術を妨害するコントロール、高火力魔術で相手を倒すバーン、低コストの火力や魔獣などで一気に攻めるアグロ等々、様々な戦い方が開発されて切磋琢磨していた環境からすれば、この【魔術消滅】に限らず全ての魔術、召喚を魔力が尽きるまで何度でも行使できるというのはハッキリ言ってチートでしか無し上に、負ける想像すら自分でもできない。

 

 因みに相手を倒す方法以外に登録した四十回分の魔術、スキル、召喚を先に使い切った方が負けというルールもあるので、ゲーム時代ではアドバンテージ(使用可能魔術、スキル、召喚の残り回数)を意識して戦わないといけないパターンも多々あったのだが、それも考える必要が無いのである。


 正にやりたい放題という言葉がしっくりくる。


「そ、そんな魔術……相手の行使する魔術を発動前に妨害する魔術はあるけれども発動し終えた魔術を消す能力を持った魔術が存在する訳がないでしょうっ! しかも、その魔術が水魔術の段位二という低段位の魔術とか尚更あり得ないわよっ!!」


 うん、当時はマジでプレイヤー全員がそう思ったし、その他にもコストは高いがトリッキーな使い方ができるカウンタースペル(魔術を無効にする魔術)も豊富であり水魔術一強の時代でもあった。


 流石に運営もこの現状を見過ごせなかったのか次の課金ガチャにて魔術によって無効にされない能力を持った魔術が出たり、【魔術消滅】を制限魔術に指定したりしてくれたお陰で何とかバランスは保てた流れがあった。


 今でも懐かしい思い出でもある。


「あり得るからオバサンの魔術は消えたんだろう? いい加減認めたらどうだ? 俺が操られていて裏にいる奴らが強いんじゃなくて、そんな奴らはおらず俺自身がただ単に強かっただけだって」

 

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