第93話 制限魔術



 せっかく俺が何をしたのか教えてやったのに感謝するどころか逆切れして信じようとしないので俺は無詠唱で【氷槍】を、シャルロットと同じように四つ同時に行使してシャルロットへと放つ。


 そのうちの【氷槍】の一つがシャルロットの頬を掠ったようで、シャルロットの頬に赤い線が走る。


「そもそも、この程度の魔術を無詠唱で行使できない時点でゴミなんだよ。 しかもこんな低段位の魔術を四つ行使するにしろ十数秒もかけないと行使できない時点でオバサンの放った魔術はゴミなんだよ。 だったら初めから一個だけにして詠唱時間をみじかくして行使した方がまだマシだろう。 あと、その無駄に長い詠唱時間をカバーする為に障壁を展開しているみたいだが、はっきり言って先に言ってしまった時点で対処法などいくらでもできてしまうのに、なんで敵である俺にばらしてしまったのか、バカとしか思えないんだが?」

「ひぃぃ……っ」


 そして俺は説明したところで信じてもらえないだろうと思った為、シャルロットが行使した自称オリジナル魔術である氷魔術段位三【氷槍】を四本同時に行使する(ただ単に四本に増えた分詠唱時間も四倍に増えただけにしか見えないので詠唱時間の長さから見ても単発で行使した方がどう考えても良いとしか思えないのだが)のだが、その際無詠唱で行使したためシャルロットのように詠唱時間も無くシャルロットめがけて放つ。


 もちろんこれで死んでしまったら元も子もないので当たらないように行使したのだが一つだけ掠ってしまったようである。


 それに関しては俺もまだまだ未熟だなと思わずにはいられない。


 しかしながらそれのおかげでどうやらシャルロトは俺が嘘をついていないという事に気付いてくれたようなのだが、俺が一歩前に出る度にシャルロットも一歩下がり始めるではないか。


 失礼な奴だな。


「ば、化け物めっ!! 私が十数秒詠唱しないと行使できない魔術をどうしてあなたは無詠唱で行使することが出来るのよっ!?」

「…………気合と根性?」

「ふざけないでよっ!!」


 そう言われてもレベルが上がって魔術の熟練度が上がると低段位から無詠唱で行使できるようになるとしか言いようがないし、それを言ったところで『なるほどそうなんだ』と納得するわけもないし……。


「そもそも私の魔術をどうやって消したのよっ!?」

「あぁ、あれは水魔術段位二【呪文消滅】を無詠唱で行使しただけだが?」


 ゲーム内でも【呪文消滅】が強すぎて大会では一試合に一回しか行使できない制限魔術にされるくらい強力な魔術だしな……。 


 

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