第92話 魔術を消しただけ
「ふんっ、どうせたまたま当たらなかっただけで、それを逆手にとって自分には私に勝てるだけの実力があるように見せかけてどうにかこの場から去るように仕向けたのでしょうけど、その手には乗らないわよ。 悪運が強い事だけは認めるけれどもこの結界の中にいる以上外にいるあなたを裏で動かしている者たちの支援も届かないから今度こそ諦めるべきねっ!!」
「だからさっきから妄想ばっかしてないでさっさと魔術を行使しろって言っているだろう? 聞こえないのか? あ、見た目はどうにか誤魔化しているけど、身体に現れる老いの変化までは進行を止めることが出来なかったんだな。 可哀そうに」
「……………あなたはだけは絶対に殺すっ!! 生きて皇帝陛下の前に行けると思うなよっ!!」
「おいおい、そんなに怒ると皺になるぞ?」
「きぃぃぃいいいっ!!」
そしていまだにグダグダと机上の空論を垂れ流しているのでその考えが正しいかどうかさっさと魔術を行使しろよと言うと何故かシャルロットは眉を吊り上げて激昂するではないか。
なので優しい俺は皺が出来る事を気にしているであろうシャルロットに対して『そんなに怒ったら皺になるぞ』と教えてやったにも関わらずこれまで以上に激昂するではないか。
前世の記憶でも実際に『きぃぃぃいいいっ!!』と言ってキレ散らかす人初めて見るんだが。
何が原因でキレているかも分からない程キレやすくなっている所をみると、きっとカルシウムが足りないのだろう。 後で牛乳を飲むように勧めてみてもいいかもしれないな。
相変わらず憤怒の表情をしながらもようやっと魔術を行使し始めたシャルロットを見ながら俺はそんな事を考える。
「今度は先ほどと違ってしっっっっかりとあなたを狙い撃ちにしてあげるわねっ!!水魔術段位三【氷槍】」
そしてまたしても十秒以上かけて魔術を行使してきたので、今回はシャルロットにも俺が何をしたのか分かりやすいようにできるだけ早い段階で、しかも全ての【氷槍】を、指をパチンと鳴らすのと同時に消し去る。
ちなみに指を鳴らさなくても消せるのだが、鳴らした方がカッコいいから鳴らしてみた。
「…………はい? 不発? そんな、確かに魔術は完成していて実際に放たれたはずでは……っ?」
「いや、実際にオバサンの魔術はちゃんと行使されていたよ。 ただ、俺がオバサンのゴミみたいな魔術を消しただけ」
「そんなバカなことを言わないでっ!! そもそもあなた魔術を詠唱する素振りしか……」
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