第90話 魔術師として未熟である


 そして俺が再度煽ると、今度は流す事が出来なかったのか、結界を張った為隠す必要が無くなったのかシャルロットは怒りの感情を隠すこともせず俺を睨みつけて来る。


「そう、そんなにあなたは死にたいのね」


 そういうとシャルロットは魔杖に魔力を込めて詠唱をし始めた事が、魔杖が輝き始めた事で分かる。


 しかしながら、二秒経っても十秒経ってもシャルロットから魔術が行使される事が無い事から、この世界の魔術師はこの程度で高位の魔術師として位置づけられているのだと少し残念な気分になる。


 ゲームの場合は一フレームでも早く魔術を詠唱して行使するのが当たり前であり、一秒経っても魔術を行使できない時点で魔術師として未熟であると言わざるを得ないレベルである。


 むしろ詠唱が一秒以上長引いてしまうような魔術を行使する場合は、その魔術を行使できる環境を作る事が必要であり、その段階案で持っていくまでに無詠唱で行使できる低段位の魔術を中心に自分優位な展開を作り出して徐々に高段位の魔術を使用して場を整えてから、相手に邪魔されない事を確信できる場面で詠唱の長い魔術を行使するというのが一般的である。


 その為十秒経ってもいまだに魔術を詠唱できていない時点で俺からすればシャルロットは魔術師としてド素人以下でしかない。


 そんな奴が高位の魔術師とか……、てかこの間に殴られるとか思わないのだろうか? 流石にそういう事は考えているだろうから何かしら対処していそうなのだが、逆にどのような対処方法を取っているのか気になり石をシャルロットに向かって投げてみたい衝動にかられ、ぐっと堪える。


「詠唱中に攻撃を仕掛けなかったのは、既にあなたが諦めてしまっているのだからでしょうけど、抵抗してこないのはそれはそれで倒し甲斐が無いわね。 まぁ攻撃されたとしても防御壁を展開しているのであなたごときでは何をしても無駄でしょうけど。 だとしても許さないのだけれども。 【氷槍】」


 そしてシャルロットは何もしないでつっ立っている俺を見て『諦めてしまっている』と勘違いをして話し、そしてようやっと魔術の詠唱が終わったのか氷魔術段位三【氷槍】を行使して俺に飛ばしてくる。


 流石この世界では高位の魔術師というだけあって出現させた氷の槍は四本もあり、それを見ると確かにこの世界では高位の魔術師と呼べるほどの実力があったんだろうな、とは思うもののただそれだけである。


 だとしても段位三程度の魔術を行使するまでに、それが例え複数出現させるとしても十秒もかかっては、対処方法は選び放題で逆にどれで対処しようか選ぶのに時間がかかるほどである。

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