第89話 早くしてみろよ、オバサン

 


 そしてシャルロットは俺の話を聞いた後、キレる訳でもなく淡々と答える。


「でも残念ね、坊や。 あなたは恐らくあなたの背後にいる何者かによって守られているからこそそのように強気な態度を取れるのでしょうけれども、そんな他者に頼っているようじゃぁ世の中うまく渡っていけないわよ? まぁ、あなたほどの年齢じゃぁ大人に説教されたところで聞きやしないでしょうし、それに結局あなたは私に捕縛されたあと皇帝陛下に拷問の末無残に殺されてその人生は終わるのでしょうけれども」

「あ? じゃぁやってみろよクソババァ」

「ほんと、生意気な餓鬼のプライドをへし折るのは、それはそれで楽しいのよね」


 そしてシャルロットはそう言うと魔術を行使する。


 どうやら予め魔杖か、マジックアイテムにあらかじめ魔術を仕込んでいたのであろう。


 シャルロットが行使した魔術の発動が終わるまで俺は何もせずに傍観していたのだが、どうやら結界魔術のひとつのようである。


 おそらく俺の煽りに対して乗ってこなかった理由にこの魔術があり、俺を隔離してしまえば簡単に捕縛できるからという圧倒的に優位な立場があったからのようである。


 しかしながらシャルロットはその優位性が自分の勘違いであるが故に存在しない事にまだ気付けていない。


「あなたは恐らく、確かに才能はあったのかもしれないし、それを今まで隠してきて、ばれないように研いできた牙を使う時だと思い行動に移したのかもしれない。 でも、やはりその若さゆえに考えが未熟すぎると言わざるを得ないわね。 いくらあなたが強かろうが昨日の襲撃をあなた一人で対処できるとは到底思えない。 となるとやはりあなたの背後には強力な力を持つ組織がついているのでしょう。 そこまで分かれば後は簡単な事。 あなたは所詮強いと言っても学生レベルの域を出ないのであれば後ろに控えている組織とあなたを隔離すればいいだけ。 後はゆっくりとあなたを嬲った後に捕縛して皇帝陛下に差し出せば、私は多額の金貨をいただいて更に美しさと若さを保つ事ができて今回の件はそれでおしまい。 こんな簡単で楽な仕事を作ってくれて君には感謝しているわ。 でもね、さっき私の事を『ババァ』と言った事を後悔させてやるわ」

「うるせぇな、だからババァなんだよ。 ババァは話が長いから困ったもんだぜ。 とりあえず御託はいいから俺の事を隔離するだけでどうにかできると思っているのならば早くしてみろよ、オバサン」

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