第88話 実にくだらない


 なので俺はシャルロットに向かって周囲に潜んでいる者たちの事は知っている旨を伝えると『何で分かったっ!?』というような表情をするも、一瞬で素の顔に戻る。


 俺に自分の感情が伝わるのを避けての行動なのでなのであろう、その早変わりにシャルロットがそれなりの実力者である事が窺える事ができる。


「というか、さっきから聞いても無いのにベラベラベラベラと喋っていたら流石に怪しむだろう? そもそも俺を捕縛して皇帝陛下に突き出す為に送られて来たような奴の話を鵜呑みにするほど俺もバカではないからな」

「………………どうやら、報告書や噂の内容通りの『魔術も武術も才能無し、知能も低い公爵家のバカ息子』というわけでもなさそうね。 評価を改めて対応しなくちゃいけないわね。 でも良いのかしら?」

「何がだ?」


 シャルロットは俺に対して『でも良いのかしら?』と聞いて来るのだが、何を指しているのか全く分からないので素直に何の事かを聞いてみる。


 今のシャルロットであればこのまま素直に教えてくれそうだし聞くだけならタダだしな。


「今まで隠し通して来た自分の能力を隠さなくて良いのかと聞いているのよ。 周囲に潜んでいる者達の気配を感知できる程の実力は最低限持っているという事が相手に分かってしまう事ぐらい気付いていたはずでしょう? それに、私があのままあなたを舐めた態度で挑んだ方があなたにとってはやりやすかったのではなくて? 折角の勝機を手放してしまうようなものじゃないの」

「………………………くくくっ、くはははははははははっ!! なんだ、そんな事かっ!! くだらない、実にくだらないっ!!」


 そしてシャルロットが詳しく説明してくれるのだが、実にくだらない内容であった為思わず俺は笑う事を堪える事ができずに笑ってしまう。


「ちょっと、何笑っているのかしら?」


 そんな俺を見てシャルロットは少しだけ怒りが含んでいる声音と表情で聞いて来る。


「いや、まだ自分が狩る側であり強者であると錯覚しているようだから、逆にこれから狩られる側であると気付かずに、まるで強者のように振舞い語っている姿を見たら余りにも滑稽だったからな。 思わず我慢できずに笑ってしまっただけだ。 あと、お前ごときに警戒された所で、子供に武器として木の枝を与えたくらいの差しかないから安心しろ。 分かりやすく言うと俺はお前を舐め腐っているんだよ。 実力を隠して相手の油断を誘う必要もないって」

「………………そう。 残念、優しくしてあげようと思ったけれどもどうやらその必要は無いみたいね」

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